大学等における研究用微生物安全管理マニュアル(案)


大学等における研究用微生物安全管理マニュアル

第1章  総則

(目的)
第1条
マニュアルは,実験室等における微生物の保管及び取扱いを安全に行うことを目的とする。

(定義)
第2条
本マニュアルにおいて,用語の定義は,それぞれ次に定めるところによる。
(1) 「微生物」とは,細菌,真菌,ウイルス並びに寄生虫をいう。
(2) 「病原性」とは,微生物が何らかの機構により,人あるいは動物に危害を及ぼすことをいう。
(3) 「指定実験室」とは,別表1に定めるレベル3から4までの微生物を取り扱う施設をいう。
(4) 「微生物集中保管室」とは,別表1に定めるレベル3から4までの微生物を保管する室をいう。
(5) 「微生物管理区域」(以下「管理区域」という。)とは,指定実験室,微生物集中保管室及びその他微生物の安全管理に必要な区域をいう。
(6) 「微生物管理区域安全運営規則」(以下「運営規則」という。)とは,前号の管理区域の安全性を確保するため,別に定める規則をいう。

(職員等の責務)
第3条
職員等(常勤・非常勤職員,研究員,大学院生等)は,管理区域内で微生物を取り扱う場合は,本マニュアルに適合する方法によらなければならない。また,法令等に定める事項については,これを遵守するものとする。
法令等
労働安全衛生法(第1条,第3条,第22条,第27条),
労働安全衛生規則(第576条,第581条,第585条,第586条,第593条,第624条),
薬事法(第1条,第9条の二,第12条,第13条,第16条),
薬局等構造設備規則(第7条),生物学的製剤製造規則(第1条,第4条),
外国為替及び外国貿易管理法(第1条,第48条),輸出貿易管理令(第1条,第2条の2),
植物防疫法(第1条,第2条,第7条,第12条,第16条の二,第16条の三,第16条の五,第17条,第18条,第39,40,41条),
輸入植物検疫規定(第7条),検疫法(第1条,第2条,第34条,第35,36,37,38条),検疫法施行例(第3条),家畜伝染予防法(第1条,第63条),
伝染病予防法(第1条,第3条の2,第29,30,31条),
結核予防法(第1条,第22条,第28条,第29条,第63条),
性病予防法(第1条,第5条,第26条,第28条,第32条),
郵便法(第12条,14条,81条),郵便規則(第8条),
細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃業に関する条約の実施に関する法律

第2章  安全管理体制

(委員会の設置)
第4条
大学等の長は,必要に応じ第1条の目的を達成するためにバイオセーフティ委員会を設置する。

(バイオセーフティ委員会)
第5条
バイオセーフティ委員会は,大学等の長の諮問に応じ,微生物の安全管理に関し,次の事項について審議する。
(1) 安全管理に関する理論的,技術的事項。
(2) 微生物のレベルの分類及び安全設備。
(3) 別表1に定めるレベル3から4までの微生物の保管,分与及び取扱。

(危害防止主任者)
第6条
  1. 大学等の長は,各指定実験室ごとに,第9条第2項により承認を得た職員等のうちから,危害防止主任者を指名する。
  2. 危害防止主任者は,本マニュアル及び運営規則に定める業務を行うとともに,当該指定実験室の業務の調整と統括についても責任を負わねばならない。

第3章  安全管理基準

(微生物のセーフティレベル分類)
第7条
  1. 微生物のセーフティレベルを分類する基準は,別表1に定める。
  2. 微生物のレベルの分類は,別表1に定める基準に基づいて,別に定める。
  3. 大学等の長は,微生物のレベルの分類が第1項の基準によることが適切でないと認めた場合は,前項の規定にかかわらず実験方法及び取扱いの量により当該微生物のレベルを別に決定する。

(実験室の安全設備及び運営に関する基準等)
第8条
微生物を取り扱う実験室は,微生物のレベルに応じ別表2に定める基準に従って必要な設備を備え,運営されるものとする。

(微生物の取扱手続)
第9条
  1. 別表1に定めるレベル2の微生物を新たに保管しようとするとき,又はこれらの微生物を用いて新たに実験をしようとするときは,様式1により予めバイオセーフティ委員会に届出なければならない。但し,すでに届出た微生物の菌種については,病原性に大きな違いがなければ新たに届出の必要はない。
  2. 別表1に定めるレベル3から4までの微生物を新たに保管しようとするとき若しくはこれらの微生物を用いて新たに実験しようとするとき又は機関以外の場所へ移動しようとするときは,様式2又は様式3により予め大学等の長に申請し承認を受けるものとする。
  3. 前項の申請事項の一つに変更の必要が生じた場合は,新たに申請を行う。
  4. 第2項又は第3項の申請があった場合において,その内容の一部を変更して承認することができる。

(微生物の移動の制限等)
第10条
病原微生物を移動させる場合,万国郵便条約の施行規則(昭和60年10月1日郵政省告示第754号)第119条に規定する容器及び包装を用いた方法によらなければならない。

(指定実験室の表示)
第11条
  1. 管理区域の出入口には,国際バイオハザード標識を表示しなければならない。
  2. 各指定実験室(レベル3及び4)の出入口には,取り扱う病原微生物の名称及びレベル並びに統括危害防止主任者の指名を記載して様式4に定める標識を表示しなければならない。

(レベル3及び4の病原微生物を取り扱う職員等)
第12条
指定実験室において病原微生物を取り扱う職員等は,次の各号に掲げる条件を満たす者でなければならない。
(1) 取り扱う微生物に関し,その性質,人体に対する病原性,実験中に起こり得るバイオハザードの範囲及び安全な取り扱い方法並びに指定実験室の機構,使用方法及び事故発生等の緊急時処置等について,十分な知識を生かしかつ技術的修練を経ている者。
(2) 第17条に規定する定期の健康診断を受け,異常の認められなかった者。

(取り扱い微生物の処置)
第13条
  1. 別表1に定めるレベル1から2までの微生物(これらに汚染されたと思われる物を含む。次項においても同じ。)は,当該微生物に最も有効な消毒滅菌方法に従い処置しなければならない。
  2. 別表1に定めるレベル3から4までの微生物は,第9条第2項の承認に係る消毒滅菌法に従い処置しなければならない。

(事故)
第14条
  1. 次の各号に掲げる場合は,これを事故として取り扱うものとする。
    (1) 外傷その他により,別表1に定めるレベル3から4までの微生物が職員等の体内に入った可能性がある場合。
    (2) 管理区域内の安全設備の機能に重大な欠陥が発見された場合。
    (3) 別表1に定めるレベル3から4までの微生物により,管理区域内が広範に汚染された場合。
    (4) 職員等の健康診断の結果,別表1に定めるレベル3から4までの取り扱った微生物による異常と診断された場合及びレベル2の微生物にあっても取り扱った微生物による健康障害であることが,事故直後の報告等により明確に特定できる場合。
    (5) 第22条3項に規定する報告があった場合。
  2. 前項第1号から第4号の事故を発見した者は,遅滞なくバイオセーフティ委員会に通報しなければならない。
  3. 前項の通報を受けたバイオセーフティ委員会は,直ちに大学等の長に報告し危害防止主任者と協同して速やかに所用の応急措置を講じなければならない。
  4. 大学等の長は,必要があると認めるときは,危険区域を設定し,危険区域の一定期間の使用禁止及び適切な事後措置を講ずることを命ずることができる。
  5. 大学等の長は,前項の措置を講じたときは,事故の内容,危険区域及び事後処置の内容等を職員等に通知しなければならない。
  6. バイオセーフティ委員会は,事後処置後の安全性を確認したときは,遅滞なく大学等の長に報告しなければならない。
  7. 大学等の長は,前項の報告を受けたときは,当該危険区域の使用禁止を解除し,職員等にその旨通知しなければならない。

(緊急時対策)
第15条
  1. 大学等の長は,地震又は火災等による災害が発生し,病原微生物の安全管理に関し本マニュアルのみでは充分でないと判断された場合は,直ちに緊急対策本部を設置しなければならない。
  2. バイオセーフティ委員会は,前項の緊急対策本部が設置されるまでの間,緊急事態に即応した所用の措置を講ずるとともに,速やかに緊急事態の内容及び範囲並びに講じた緊急措置の内容等を大学等の長に報告しなければならない。
  3. 地震又は火災等の災害による被害の防止対策及び大規模地震対策特別措置法(昭和53年6月15日法律第73号)第2条第13号に規定する警戒宣言(以下「警戒宣言」という。)が発せられた場合において講じなければならない措置は,本マニュアルに定めるもののほか,各機関の定めるところによる。
  4. 各指定実験室において病原微生物を取り扱う職員等は,地震又は火災等の災害が発生したとき,又は警戒宣言が発せられたときは,直ちに運営規則に定める緊急時措置を講じなければならない。

(緊急対策本部)
第16条
  1. 緊急対策本部は,大学等の長及びバイオセーフティ委員会で組織する。
  2. 本部長は,大学等の長を持って充てる。
  3. 緊急対策本部は,次の事項を指揮又は,処理する。
    (1) 病原微生物の逸出の防止対策
    (2) 汚染防止並びに汚染された場所及び物の処置
    (3) 被汚染者の処置
    (4) 危険区域の設定
    (5) 危険区域の安全性調査及び危険区域の解除
    (6) 広報活動
    (7) 前各号に掲げるもののほか,緊急時措置に必要な事項。
  4. 緊急対策本部は,微生物に関しての安全性が確認され緊急事態が解消したとき,本部長が解散する。

第4章  健康管理

(定期の健康管理)
第17条
  1. 大学等の長は,管理区域での仕事に従事する職員等に対して取り扱う微生物が人体に病原性があるとされている場合には次に定める定期の健康診断を実施する。
    (1) 取り扱う特定の微生物に対する抗体価測定等
    (2) 取り扱う微生物により発症する恐れのある症候の臨床的診断
  2. 定期の健康診断は,少なくとも年1回実施する。
  3. 職員等は,前項の健康診断を受けなければならない。

(臨時の健康診断)
第18条
大学等の長は,必要と認める場合には,職員等に対して臨時の健康診断を受けさせることができる。

(健康診断の記録)
第19条
  1. 大学等の長は,健康診断の結果,健康管理上必要と認められる事項について,職員等ごとに記録を作成しなければならない。
  2. 前項の記録は,職員等の異動又は退職後原則として,10年間,これを保存しなければならない。但し扱う微生物によって潜伏期は異なり,一般に短いものが多いので,その場合にはこの限りではない。

(健康診断後の措置)
第20条
大学等の長は,健康診断の結果,職員等に別表1に定めるレベル2から4までの病原微生物による感染が疑われるときには,直ちに安全確保のために必要な措置を講ずるものとする。

(血清の保存)
第21条
大学等の長は,職員等の健康管理の一助とするため,特殊な病原微生物を扱う職員等は別に定める「職員の血清保存実施要項」に基づき,血清を保存することが望ましい。

(病気等の届出等)
第22条
  1. 別表1に定めるレベル3から4までの病原微生物等を取り扱う職員等は,当該微生物による感染が疑われる場合は,直ちに大学等の長,バイオセーフティ委員又は危害防止主任者にその旨を届け出なければならない。
  2. 前項の届出を受けた者は,直ちに当該微生物による感染の有無について,詳細な調査をしなければならない。
  3. バイオセーフティ委員長は,前項の調査の結果,当該微生物に感染したと認められる場合又は医学的に不明瞭である場合は,直ちに,大学等の長に報告しなければならない。

第5章  その他

(その他)
第23条
病院などにおける微生物検査施設では本マニュアルを準用するものとする。ただし,細則については各機関が定めることとする。病理解剖室等における病原微生物に関する安全管理及び病院内感染対策については各機関が定めることとする。

別表1

微生物のバイオセイフティレベルを分類する基準

 微生物を試験管内で通常の量を取り扱う場合ヒトを標準として,以下の基準により,微生物のバイオセーフティレベルを分類する。
 ただし,動物のみに感染する微生物については付表2に示す。

レベル1
 ヒト或いは動物に重要な疾患を起こす可能性のないもの。

レベル2
 ヒト或いは動物に病原性を有するが,実験室職員,その他の職員,家畜等に対し,重大な災害となる可能性が低いもの。

レベル3
 ヒトに感染すると通常重篤な疾病を起こすが,一つの個体から他の個体への伝播の可能性は低いもの。

レベル4
 ヒト又は動物に重篤な疾病を起こし,かつ,罹患者より他の個体への伝播が,直接又は間接に容易に起こり得るもの。有効な治療及び予防法が通常得られないもの。
注:

別表1 付表1

 別表1に定める基準により,微生物のバイオセーフティレベルを,下記のごとく分類する。ただし,最新の知見に基づき分類の変更,あるいは,新たな微生物の追加が必要とされた場合には,これを適宜行うこととする。

微生物のレベル分類

1. ウイルス

 (ウイルス名は日本ウイルス学会用語委員会による英語表記を用い,表中ではVirusを省略した。なお,ここに記載されていないウイルスについては個別に考慮するものとする。)

・レベル1
Live Vaccine Virus(Vaccinia,Rinderpest vaccineを除く)

・レベル2
 Adeno
 Batai
 BK
 Bunyamwera
 California encephalitis
 Canny distemper
 Corona
 Cowpox
 Coxsackie(A,B全)
 Creutzfeldt-Jakob disease agent
 Dengue(全型)
 Echo(全型)
 Eastern equine encephalitis
 Entero(68-71)
 Epstein-Barr(EB)
 Gibbon ape lymphosarcoma
 Hepatitis(A,B,C,D,E)
 Herpes saimiri
 Herpes simplex(1,2)
 Human cytomegalo
 Human herpes6
 Human herpes7
 Human papilloma
 Human parvo
 Human rhino
 Human rota
 Human T-cell leukemia-lymphoma
 (HTLV1,2)
 Influenza(A,B,C)
 Japanese encephalitis
 JC
 La Crosse
 LCM1)
 Measles(SSPE)
 Molluscum contagiosum
 Monkeypox
 Mumps
 Murray Valley encephalitis
 Newcastle disease
 O'Nnyong-Nnyong
 Orbi
 Parainfulenza(1-Sendai2),2-4)
 Polio(1-3)
 Rabies(fixed,live vaccine)
 Rinderpest virus(vaccine strain)
 RS
 Rubella
 Semliki forest
 Simian Immunodeficiency virus(SIV)3)
 Simbu
 Sindbis
 St.Louis encephalitis
 Tanapox
 Vaccinia
 Varicella-zoster
 Vesicular stomatitis
 Western equine encephalomyelitis
 West Nile fever
 Yaba monkey tumor pox

 1) 大量に増殖させる場合はレベル3とする。
 2) 動物実験を行う場合はレベル3とする。
 3) 取り扱いは安全キャビネット内で行う。

・レベル3
 Chikungunya
 Colorado tick fever
 Hanta virus
 Human immunodeficiency(HIV1,2)
 Kyasanur Forest fever
 Negishi
 Powassan
 Rabies(street strain)
 Rifit Valley fever
 Tick-borne encephalitis
 Venezuelan equine encephalitis

・レベル4
 Crimean Congo hemorrhagic fever
 Ebola
 Herpes B
 Junin
 Lassa
 Machpo
 Marburg
 Variola(major,minor)
 Yellow fever(17D vaccine strainを除く)

注:媒介節足動物を用いる実験の場合は別途個別に考慮する。

2. マイコプラズマ及び細菌

・レベル1
 レベル2及び3に属さない細菌

・レベル2
 Actinobacillus A.actinomycetemcomitans
 Actinomadura A.madurae
  A.pelletieri
 Actinomyces A.bovis
  A.israelii
  A.pyogenes
  A.viscosus
 Aeromonas A.hydrophila(毒素原性株)
  A.sobria(毒素原性株)
 Bacillus B.cereus(毒素原性株)
 Bordetella B.bronchiseptica
  B.parapertussis
  B.pertussis
 Borrelia    全菌種
 Burkholderia cepacia
 Calymmatobacterium C.granulomatis
 Campylobacter C.coli
  C.jejuni
 Chlamydia Chlamydia pneumoniase1)
  Chlamydia psittaci1)
  Chlamydia trachomatis
 Clostridium C.botulinum
  C.difficile
  C.haemolyticum
 C.histolyticum
 C.novyi
 C.perfringens(毒素原性)
 C.septicum
 C.sordelli
 C.sporogenes
 C.tetani
 
 Corynebacterium C.diphtheriase
  C.pseudodiphtheriticum
  C.jeikeium
 Erysipelothrix E.rhusiopathiase
 Escherichia E.coli(E.coli,K12株,B株並びにその誘導体を除く)
 Francisella F.novicida
 Fusobacterium F.necrophorum
 Haemophilus H.ducreyi 
  H.influenzae
 Helicobacter H.pylori 
 Klebsiella K.oxytoca
K.pneumoniase
 Legionella 全菌種(Legionella-like organismsを含む)
 Leptospira L.interrogans全血清型
 Listeria L.monocytogenes
 Moraxella M.(B.)catarrhalis
 Mycobacterium M.avium
  M.chelonae
  M.lepraemurium
  M.fortuium
  M.haemophilum
  M.intracellulare
  M.kansasii
  M.leprae
  M.ulcerans
  M.lepraemurium
  M.malmoense
  M.malmoense
  M.marinum
  M.paratuberculosis
  M.scrofulaceum
  M.simiae
  M.szulgai
  M.xenopi
 Mycoplasma M.fermentans(Lo)
  M.hominis
  M.pneumoniase
 Neisseria N.gonorrhoeae
  N.meningitidis
 Nocardia N.asteroides
  N.brasiliensis
  N.farcinica
  N.otitidiscaviarum
 Pasteurella P.multocida(動物のみに疾病をおこす血清型は除く)
  P.pneumotropica
  P.urease
Plesiomonas      P.shigelloides 
 Pseudomonas P.aeruginosa
 Salmonella レベル3を除く全血清型
 Serattia S.marcescens
 Shigella 全菌種
 Staphylococcus S.aureus
 Streptobacillus S.moniliformis
 Streptococcus S.pneumoniase
  S.pyogenes
 Treponema T.carateum
  T.pallidum subsp.pallidum
  T.pallidum subsp.pertenue
 Vibrio V.cholerae
  V.fluvialis
  V.mimicus
  V.parahaemolyticus
  V.vulnificus
 Yersinia Y.enterocolitica
  Y.pseudotuberculosis
  1) 大量に増殖させる場合はレベル3とする。
  * 動物実験においては別途考慮する。

・レベル3
 Bacillus B.anthracis
 Brucella 全菌種
 Burkholderia B.mallei
  B.pseudomallei
 Coxiella burnetii
 Francisella F.tularensis
 Mycobacterium M.africanum
  M.bovis
  M.tuberculosis
 Rickettsia spp.
 Salmonella S.serovar paratyphi A
  S.serovar typhi
 Yersina Y.pestis 

3.真菌

・レベル1
 レベル2,3に属さない真菌

・レベル2
 Aspergillus fumigatus
 Candida albicans
 Cladosporium carrionii
 Cladosporium trichoides(C.bantianum)
 Cryptococcus neoformans
 Expophiala dermatitidis
 Fonseccae pedrosoi
 Sporothrix schenckii

・レベル3
 Blastomyces dermatitidis
 Coccidioides immitis
Histoplasma capsulatum
 Histoplasma farciminosum
 Paracoccidioides brasiliensis
 Penicillium marneffei
  * H.capsulatum var capsulatumとH.capsulatum var duboisiiの両
   variantを含む。

  注: Aspegillus spp.,Chaetomium spp.,Fusarium spp.,Myrotheciu m spp.,
    Penicillium spp.の毒素産生株はレベル2扱いとする。

4. 寄生虫

 ( )のついている寄生虫については,( )内を規制の対象とする発育期とし,それ以外の発育期は,規制の対象としない。( )がついていない寄生虫については全発育期を対象とする。

・レベル1
 レベル2に属さない原虫類,吸虫類,条虫類及び線虫類

・レベル2
人体寄生性原虫類
 Acanthamoeba spp.
 Cryptosporidium spp.(oocyst)
 Entamoeba histolytica
 Giardia lamblia
 Leishmania spp.
 Naegleria spp.
 Plasmodium spp
 Toxoplasma gondii
 Trichomonas vaginalis
 Trypanosoma spp.

人体寄生性吸虫類
 吸虫類の被襄幼虫
 Schistosoma spp.(cercaria)

人体寄生性条虫類
 Echinococcus spp.(egg,hydatid,sand,protoscolex)
 Hymenolepis spp.(egg,cysticercoid)
 Taenia solium(egg,cysticercus)

人体寄生性線虫類
 鉤虫類の感染仔虫
 回虫類の仔虫包蔵卵
 Angiostrongylus spp.(感染仔虫)
 Strongyloides spp. (感染仔虫)
 Trichinella spiralis(感染仔虫)

・レベル3
 なし

 上記レベル2に指定された寄生虫のうちLeishmania spp.,Trypanosoma spp.,及びPlasmodium spp.の媒介昆虫を用いた感染実験,Schistosoma spp.,Angiostrongylus spp.等の媒介貝を用いた感染実験,並びにToxoplasma gondii,Echinococcus granulosus及びE.multilocularisを用いた本来の終宿主での感染実験においては,通常の微生物学的操作で感染を防御する。しかし,伝播者或いは終宿主が排出する襄子,卵,幼虫等を扱う場合には,別途指定の実験施設を使用しなければならない。

[媒介動物を用いての感染実験]
 媒介昆虫を用いたLeishmania spp.,Trypanosoma spp.,及びPlasmodium spp.の感染実験にあたっては,媒介昆虫は完備した飼育用昆虫ゲージに入れ,二重の密閉扉を有する実験室内で行う。
 また,媒介貝を用いたSchistosoma spp.,Angiostrongylus spp.等の感染実験に当たっては実験貝は完備した飼育装置内で飼育する。
 さらに実験終了後は使用水及び装置を熱処理しなければならない。

[終宿主を用いての感染実験]
 T.gondii感染のネコ,E.granulosus感染及びE.multilocularis感染のイヌ等を用いた実験に際しては完全な屎尿処理を行い得るケージを用いて排泄物の処理を行う。
 実験終了後はケージ並びに実験室を熱湯処理しなければならない。

別表1 付表2

実験動物における微生物のバイオセーフティレベル分類

分類基準

 ヒトに対する病原性は無いか極めて低いが動物間において感染を起こす微生物のin vitroでの取り扱いについて分類した。対象実験動物の範囲は,原則として,イヌ,ネコ,サル類,げっ歯類とした。
 なお,in vivo実験の場合,1ランク上げる微生物については,分類表中に*で示した。ここに挙げていない微生物については個別に考慮するものとする。

レベル1
動物への感染がほとんどないもの。
レベル2
動物への感染は少なく,感染が起きても汚染は防ぎうるもの。
レベル3
動物への感染力が強く,汚染が起こるもの。

1. ウイルス

レベル1
 ワクチン株など(Rinderpest vaccineを除く)

レベル2
 Canine adeno(Infectious canine hepatitis)
 Canine corona
 Canine distemper
 Canine parvo
 Cavid herpes 1(Guinea pig cytomegalo)
 Ectromelia(Mousepox)
 Feline calici
 Feline immunodeficiency
 Feline infectious peritonitis
 Feline leukemia
 Feline panleukopenia
 Feline rhinotracheiti
 Herpes papio
 Kilham's rat
 Lactate dehydrogenase(LDV)
 Lapine parvo
 lapine rota
 Mouse diarrhea(Mouse rota)
 Mouse hepatitis
 Murine adeno
 Murine polio
 Murine leukemia
 Pneumonia of mice
 Rabbit pox
 Rinderpest(vaccine strain)
 Sialodacryoadenitis(rat corona)

・レベル3
 なし

2. 細菌

・レベル1
 ワクチン株など

・レベル2
 Bacillus B.piliformis(Tyzzer's disease agent)
 Citrobacter C.freundii
 Cilia-associated respiratory(CAR)bacillus
 Corynebacterium C.kutscheri
 Mycoplasma M.arthritidis
  M.neurolyticum
  M.pulmonis
 Streptococcus S.zooepidemicus
 Treponema T.cuniculi

・レベル3
 Pasteurella P.multosida(B:6,E:6,A:5,A:8,A:9)

3. 真菌

・レベル1
 レベル2,3に属さない真菌

・レベル2
 Microsporum M.canis T.mentagrophytes
 Trichophyton T.verrucosum

・レベル3
 なし

4. 寄生虫

・レベル1
 なし

・レベル2
 Eimeria E.caviae
E.falciformis
E.intestinalis
E.stiedai
 Giardia G.muris
 Nosema N.cuniculi
 Hexamita H.muris

・レベル3
 なし

  注: 上記レベル2に指定された寄生虫を用いた実験を行う際は,完全な屎尿処理を行い得るケージを用いて排泄物の処理を行うとともに,実験終了後はケージ並びに実験室を熱湯処理すること。

別表2

微生物取扱実験室の安全設備及び運営基準

レベル1
(1)通常の微生物学実験室を用い,特別の隔離の必要はない。
(2)一般外来者の立入りを禁止する必要はない。
レベル2
(1)通常の病原微生物学実験室を限定した上で用いる。
(2)エアロゾル発生のおそれのある実験は生物学的安全キャビネットの中で行う。
(3)実験進行中は,一般外来者の立入りを禁止する。
レベル3
(1)廊下の立入り制限,二重ドアー又はエアーロックにより外部と隔離された実験室を用いる。
(2)壁,床,天井,作業台等の表面は洗浄及び消毒可能なようにする。
(3)排気系を調節することにより,常に外部から実験室内に空気の流入が行われるようにする。
(4)実験室からの排気は高性能フィルターで除菌してから大気中に放出する。
(5)実験は生物学用安全キャビネットの中で行う。動物実験は生物学安全キャビネット又は陰圧アイソレーターの中で行う。
(6)作業者名簿に記載されたもの以外の立入りは禁止する。
(7)微生物の実験室からの逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずること。
レベル4
(1)独立した建物として,隔離域とそれを取り囲む,サポート域を設ける。
(2)壁,床,天井はすべて耐水性かつ気密性のものとし,これらを貫通する部分(給排気管,電気配線,ガス,水道管等)も気密構造とする。
(3)作業者の出入口には,エアーロックとシャワーを設ける。
(4)実験室内の気圧は隔離の程度に応じて,気圧差を設け,高度の隔離域から,低程度の隔離域へ,又低度の隔離域からサポート域へ空気が流出しないようにする。
(5)実験室への給気は,1層のHEPAフィルターを通す,実験室からの排気は2層のHEPAフィルターを通して,外部に出す。この排気除菌装置は予備を含めて2組設ける。
(6)実験用とサポート域の間に実験器材の持ち込み及び取り出し用として,両面オートクレーブ及び両面ガス(エチレンオキサイド又はホルマリン)滅菌装置を設ける。
(7)実験室からの排水は,120℃加熱滅菌し,冷却した後一般下水へ放出する。
(8)実験は完全密閉のグローブ・ボックス型安全キャビネット の中で行う。
(9)作業者名簿に記載された者以外の立入りは禁止する。
(10)微生物の実験室からの逸出を未然に防止するための適切な措置を講ずること。

(注)組換えDNA実験に用いられるP1,P2,P3実験室それぞれを,バイオセーフティ委員会等の承認を得た上で,レベル1,2,3の実験室として使用してもよい。

(参考)
実験室安全運営規則作成基準

  1. 指定実験室の設備及び運営は,別表2の条件に適合すること。
  2. 指定実験室の範囲を外部より容易に知り得るように明確に指定し,表示するよう義務づけること。
  3. 指定実験室において取り扱う微生物に関して,予防接種その他の予防法がある場合は,その実施を義務づけること。
  4. 如何なる状況の下にあっても,15歳以下の小児の立入りを許可してはならないものとすること。
  5. 微生物の実験室区域及び保管場所は同一の安全基準を満たし,保管容器は施錠し,保管及び出し入れの記録を整備するようにすること。
  6. レベル2以上の微生物の実験においては,口を用いたピペット操作を禁止すること。
  7. 指定実験室での飲食,喫煙,化粧及び食物を含む私物の保管等を禁止すること。
  8. 微生物及びこれを含む可能性のある実験材料を廃棄するに当たっては,別に定める方法で滅菌するものとすること。
  9. その他,本規定の内容に適合する安全設備の定期点検,健康管理のための診断項目,事故時の処理方法,連絡系統等を具体的に規定すること。
  10. 事故,機械の保守等のために,職員等以外の者が立入る必要が生じた場合は,バイオセーフティ委員長に申請し,その指示に従うように規定すること。
  11. その他指定実験室の安全管理に必要な事項を規定すること。

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熊本大学・遺伝子実験施設, E-mail:www@gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp