アクティブボード・2002年 1月
研究発表を行った学会;第31回日本免疫学会学術集会
2001年12月11日〜13日(大阪)
タイトル;胚中心における新規DNAプライマーゼとしてのGANP
発表者;桑原一彦
(医学部免疫学講座)
Abstract;
【目的】末梢リンパ組織における胚中心(GC)は体細胞突然変異、親和性の成熟、クラススイッチなどに関わる後期B細胞分化の場として極めて重要である。我々は、GCで発現が上昇する核内分子GANPを同定し、この分子がDNA複製に必須の分子であるMCM3と直接会合することより、細胞の増殖制御に関与する分子である可能性を示してきた。今回、GANPのN末端側の領域にDNAポリメラーゼaに結合するDNAプライマーゼであるp49(a-プライマーゼ)との相同性を見い出した。真核生物ではこれまで、RNA/DNAプライマーゼは唯一のa-プライマーゼによって、DNA複製の際のlagging strandの伸長に関わるとされてきた。GANP分子に、果して同様のRNA/DNAプライマーゼ活性があるのかを解析した。
【方法及び結果】マウスGANPの138から550アミノ酸の領域を6xHisでタギングして大腸菌内で発現させ、ニッケルカラムで精製した。このリコンビナントを用いて、M13の単鎖DNAを鋳型としたin vitro DNA primase assayを行った。その結果、GANPのリコンビナント分子はRNAプライマー(いわゆるOkazaki fragment)を合成するプライマーゼの活性が存在することが明かとなった。つまり、(1)GANPは真核生物における第二のRNA/DNAプライマーゼである、(2)a-プライマーゼとは異なり、発現が誘導されるプライマーゼである、(3)GANPの発現が胚中心などで強く見られることより、臓器・組織特異的なプライマーゼである、ということが明かとなった。これまでのa-プライマーゼの解析より、GANPがDNA修復、ゲノムの安定性などに関与する可能性は極めて大きく、これらの現象と胚中心で行われる様々なイベントとの関係を明らかにしたいと考えている。
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