アクティブボード・2月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2002年 2月 4日 更新


アクティブボード・2002年2月

研究発表を行った学会;第31回日本免疫学会学術集会
2001年12月11日〜13日(大阪)
タイトル;マウスES細胞からの樹状細胞分化誘導法の開発
発表者;千住 覚
   (医学研究科 免疫識別学講座)
Abstract;
【目的】
 樹状細胞の抗原提示機構ならびにT細胞応答制御機構については、近年の研究により種々の知見が得られているが、未だ未知の部分が多い。また、生体内で樹状細胞が抗原提示細胞として免疫制御を中心的に担っていることより、樹状細胞、なかでも遺伝子改変によりその機能を修飾した樹状細胞を用いた免疫制御療法が新しい医療技術として有望視されている。我々は、遺伝子改変を容易に行うことが可能なES細胞からin vitroで樹状細胞を誘導する方法の開発を目指して研究を行った。
【研究方法】
 マウスES細胞をM-CSFを産生しない骨髄ストローマ細胞株であるOP-9と5日間共培養し、血球系細胞への分化を誘導した。次に、GM-CSFを添加した培養液中においてM-CSF産生性の骨髄ストローマ細胞であるPA-6とともに5日間培養を行った。この結果出現するES細胞由来の細胞をGM-CSFの存在下でさらに3-7日培養すると、不規則な形態と樹状突起を有する浮遊細胞が誘導された。さらに、この細胞をTNF-a等で刺激すると、典型的な成熟樹状細胞の形態を呈するようになった。こららの細胞について、細胞表面マーカーの解析ならびに抗原提示機能、T細胞刺激能について解析を行った。さらに、ES細胞に遺伝子導入し、これを樹状細胞へ分化させた後に発現させ機能させることを試みた。
【研究結果】
 本法で誘導されたES細胞由来の樹状細胞は、また、MHCクラスII分子、CD11c、CD86、CD40分子等成熟した骨髄系樹状細胞と同様の細胞表面マーカーを発現していることが確認された。さらに一次アロMLR刺激活性および蛋白質抗原をプロセスしてMHCクラスII分子上に提示する能力を有していた。β-actinプロモーターとIRES-PuroRを含む発現ベクター(pCAGGS-IR-Puro)を用いることにより、ES細胞に導入した遺伝子を樹状細胞に分化させた段階で発現するクロ−ンを効率良く得る方法を確立した。この方法により、ES細胞に特定の抗原の遺伝子を導入し、これを樹状細胞へ分化させたものを用いて当該抗原に特異的なT細胞を刺激することが可能であった。
【考察】
 本研究においてES細胞から誘導した樹状細胞は、生体内に存在する樹状細胞あるいはマウスの骨髄細胞から誘導される樹状細胞と同等の機能を有するものであると考えられる。ES細胞を樹状細胞へ分化させる技術は、以下の研究に応用が可能と考えられる。
1)遺伝子の導入あるいは標的破壊による、樹状細胞において発現する遺伝子の機能解析
2)gene trap ES cloneを用いた、樹状細胞において発現する新規遺伝子の探索
3)抗原と種々の免疫制御分子を同時に発現させた樹状細胞を生体内へ移入することによる、抗原特異的免疫制御療法の開発


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