アクティブボード・2002年4月
研究発表を行った学会;日本ウイルス学会、第49回学術集会
2001年11月18〜20日(大阪)
タイトル;HIV感染細胞上に提示されたT細胞エピトープの新たな検出法の試み
発表者;上野 貴将 氏
(エイズ学研究センター ウイルス制御分野)
Abstract;
【目的と意義】 細胞傷害性T細胞 (CTL)はT細胞レセプター (TCR)を介して、HIV感染細胞のMHC class I分子に提示されたHIV由来ペプチドを認識して、HIV感染細胞を排除している。しかしながら、HIV感染細胞上のCTLエピトープの提示を経時的、定量的に検出し、抗原提示という側面からHIVの病態を解析した例はまだない。感染細胞上のCTLエピトープを検出する新たな方法として、可溶型TCRを用いることを考えた。本研究ではその候補となるTCRについて、遺伝子と蛋白質の取得およびTCRの詳細な機能解析を行った。
【材料と方法】 HLA-B*3501およびB*5101に提示されたHIV Pol由来ペプチド (C9;H-IPLTEEAEL-OH)を特異的に認識するCTLクローン (519 & 589)からTCR構成遺伝子をクローニングした。レトロウイルスベクターを用いてTCRが欠損したT細胞ハイブリドーマにこの遺伝子を導入し、TCRを再構成させて、TCR認識機能の詳細な解析を行った。さらに、可溶型TCRの大腸菌での大量発現系を構築した。
【結果と考察】 TCR構成遺伝子をクローニングした結果、CTLクローン519および589は全く同一のabTCR (Va12.1/Vb5.6)を有していた。この遺伝子をT細胞ハイブリドーマに導入したところ、細胞表面上にTCR/CD3複合体の発現が認められた。また、C9ペプチドを用いたMHCテトラマーと特異的な結合活性を示したことから、再構成したTCR(Va12.1/Vb5.6)はC9ペプチド・MHC複合体に強く特異的に結合することが明らかとなった。次にVa12.1/Vb5.6の可溶性ドメインのC末端にそれぞれJunおよびFosのロイシンジッパードメインを付加した発現系を構築したところ、双方の蛋白質とも封入体として大腸菌内に大量に産生された。これら封入体の可溶化とヘテロダイマーの巻き戻し法を検討中である。さらに、ペプチド特異性の異なるTCRを得るために、HIV EnvあるいはNef由来のペプチドに特異的なCTLクローンからの遺伝子クローニングも進めている。
研究協力者: 郷田秀一郎、津本浩平、 熊谷泉(東北大学・院工・生工)
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