アクティブボード・2002年 6月
研究発表を行った学会;第55回日本細胞生物学会大会
2002年5月21日〜23日(横浜)
タイトル;AAAプロテアーゼFtsHとその線虫ホモログの機能解析
発表者;山田(稲川) 知子 氏
(発生医学研究センター 細胞複製分野)
Abstract;
大腸菌のFtsHは、AAAファミリーに属するATP 依存性メタロプロテアーゼで、未会合の膜タンパク質や一群の細胞質調節タンパク質を分解し、膜タンパク質の品質管理や細胞機能の調節を行っているが、これらの基質の認識、unfolding、translocationの機構は不明である。AAA+プロテアーゼでは、6量体オリゴマーリングの中央の孔を形成するループに[YXG]配列があり、このTyr残基の側鎖がATP加水分解のサイクルで動くことで、基質を一方向に移動させるというモデルが提唱された。大腸菌FtsHでは228-230番目の [FIG]が上記配列に相当し、Phe はTyrと同様大きな側鎖を持つ芳香族残基である。Pheをランダムに他のアミノ酸に置換し、温度感受性ftsH変異の相補活性を調べたところ、活性を示した残基は芳香族や脂肪族など電荷を持たない比較的長い側鎖を持つものであった。In vitroの結果も併せ、このPhe残基のtranslocationにおける重要性を考察する。線虫にはFtsHホモログが3個存在し、ミトコンドリアに局在すると考えられているが、その発現部位や機能は不明である。これらのうち2個はヒト疾患遺伝性痙性対麻痺の原因因子として同定されたparapleginと高い相同性を示すことから、その解析は、ヒト遺伝病の解明にもつながる。これらのFtsHホモログについて、RNA干渉法による機能阻害体の表現型やGFP融合タンパク質の発現部位を調べ、2つのparapleginホモログは、表現型においても発現組織においても差があることが分かった。
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