アクティブボード・6月

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2002年 6月17日 更新


アクティブボード・2002年 6月

研究発表を行った学会;日本発生生物学会第35回大会
2002年5月21日〜23日(横浜)
タイトル;凍結8細胞期胚と解凍ES細胞を用いたキメラマウスの作製
発表者;牟田 真由美 氏
   (発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
 遺伝子改変マウスの作製は、遺伝子の個体内での機能を調べるために有効な手段である。現在、我々は遺伝子トラップ法を用いて挿入変異マウスの大量作出を行うためにキメラマウスを作製している。
 従来キメラマウスの作製は、凍結保存されたES細胞を解凍後、数日間培養したものと、新鮮8細胞期胚(雌マウスを過排卵処理後、雄マウスと交配、採卵した胚)を共培養することにより行っていた。しかし、新鮮8細胞期胚を用意するには、採卵に至るまでのマウスの処理等に多くの手間と時間がかかっていた。また、膨大な飼育スペースが必要であるなどの問題もあった。一方ES細胞についても、解凍後数日間の培養が必要なため、その間の手間や経費がかかっていた。
 そこで、以上の問題を解決し、さらに効率良く大量のキメラマウスを制製する方法を検討した。まず新鮮8細胞期胚の代わりに、凍結状態で市販されている8細胞期胚を用いた(これを凍結8細胞期胚とする)。凍結8細胞期胚を用いることにより、採卵に至るまでにかかる時間と手間が省かれるだけではなく、マウスの飼育スペースも必要でなくなると期待される。また、凍結保存されたES細胞を解凍直後、数日間の培養なしで用いることを試みた。培養を行わないため、その間の手間と経費が削減されると考えられる。
 これらの方法でキメラマウスの作製を行ったところ、まず作製にかかる手間と時間を大幅に削減することが出来た。次に、得られたキメラマウスと従来の方法で作製したキメラマウスとを、産子数やキメラ率等について比較検討した。その結果、新しい方法でキメラマウスを作製した場合でも、従来の方法と大差なく、高い率で良好なキメラマウスが得られることがわかった。現在、これらのキメラマウスについてES細胞の生殖系列への寄与を解析中である。


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