アクティブボード・2002年 8月
研究発表を行った学会;日本発生生物学会第35回大会
2002年5月21日〜23日(横浜)
タイトル;アフリカツメガエル(Xenopus laevis)幼体精巣の器官培養による精子形成機構の解析
発表者;河崎 敏広 氏
(大学院自然科学研究科自然システム専攻)
Abstract;
精子は、雄性生殖幹細胞の分裂により生じた精原細胞が体細胞分裂を繰り返して増殖した後、減数分裂、べん毛の形成や核凝縮などの形態変化を経て形成される。この様な複雑な精子形成機構を解析していく際、精巣の器官培養系は確立しておきたい実験系の一つである。我々は、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)精子形成細胞の詳細な観察から、各分化段階の細胞を正確に把握できるようになった。そこで今回、このアフリカツメガエルの精巣器官培養系を確立する試みを行った。第一精原細胞だけを含む変態直後幼体の精巣をろ胞刺激ホルモン(follicle-stimulating hormone; FSH )存在下で培養したところ、一部の細胞が減数分裂期の第一精母細胞まで分化した。しかし、多くの細胞は第一精原細胞のままで分化していなかった。培養した精巣と飼育個体の精巣を比較したところ、培養した精巣の成長が著しく悪く、その原因が第一精原細胞の数が増加しないことにあることがわかった。これらの結果から、形態的に第一精原細胞と同定される細胞には、(1) FSHの存在下で第一精母細胞へと増殖・分化する細胞、(2)自己増殖をしているが、FSHではその増殖活性が維持できない細胞、の2つの異なった分化段階にある細胞があることが示唆された。FSHにtestosterone、 5-alpha-dihydrotestosterone、17-beta-estradiol、insulin、transferrinなどのhormoneやvitamin 類を加えて培養しても第一精原細胞の増殖活性は維持できなかったが、精巣を別個体の皮下に移植して宿主個体を飼育したところ、通常の精巣で起こる第一精原細胞の増殖が観察された。このことから、第一精原細胞の増殖活性も未だ明らかにできていない体液成分により制御されていることが考えられた。
|