アクティブボード・9月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2002年 8月31日 更新


アクティブボード・2002年 9月

研究発表を行った学会;日本発生生物学会第35回大会
2002年5月21日〜23日(横浜)
タイトル;マウスES細胞から膵臓の分化誘導
発表者;粂 昭苑 氏
   (発生医学研究センター 再建医学部門 幹細胞制御分野)
Abstract;
 マウスES細胞が樹立されてからは、それを使ってキメラマウス、遺伝子ノックアウトマウスの作製などの技術が確立され、マウスの遺伝学解析においては中心的な役割を担っている。’98年にはヒトES細胞が樹立されて(Thomson et al., 1998)からは、再生医療における可能性を秘めることで、ES細胞を用いた分化研究がにわかに注目を集めるようになってきた。
 われわれはES細胞から膵臓への分化誘導について検討を行って来ている。膵臓への分化誘導を簡単にアッセイできるために、pdx1-lacZノックインES細胞を用いている。このES細胞から分化した膵臓細胞は、膵臓の初期マーカであるpdx-1遺伝子の発現をlacZで簡単にアッセイできる。この系を用いて、我々の興味の内胚葉由来の膵臓への分化については、中胚葉、外胚葉由来の臓器への分化に比べると、自然誘発的な分化は非常に低いことが分かった。そこで、膵臓への分化誘導を促進するために、各種内胚葉由来の胚原基との共培養法を試みたところ、膵臓原基と共培養した場合が一番効果があった。また、この効果が膵mesenchymでも代用できること、さらにTGFb2で部分的に代用できることが分かってきた。しかしながら、膵臓原基と共培養した場合でも分化誘導能は約0.05%と非常に低いものであった。この低レベルの分化導では、分化した細胞の選択的単離が難しいと考えられる。そのためには、内胚葉へ分化した細胞の効率を上昇させる、あるいは異なった手法を用いて分化したES細胞を選別することが今後大変重要となる。


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