アクティブボード・2002年11月
研究発表を行った学会;第75回日本生化学会大会
2002年10月14日〜17日(京都)
タイトル;新規ミトコンドリアタンパク質輸送因子としてのAIPの同定と機能解析
発表者;矢野 正人 氏
(熊本大学・医学部・分子遺伝学講座)
Abstract;
ミトコンドリアタンパク質の多くはサイトソルにおいてアミノ末端側に移行シグナルを持つ前駆体タンパク質として合成される。前駆体タンパク質はサイトソルに存在する分子シャペロンの働きにより、ほどけた状態に保たれたままミトコンドリアへと運ばれ、ミトコンドリア外膜上の膜透過装置に受け渡される。本研究において、我々はtwo-hybrid法を用いたスクリーニングにより、外膜透過装置因子Tom20に結合するタンパク質としてimmunophilin様タンパク質であるaryl hydrocarbon receptor interacting protein (AIP)を同定した。two-hybrid法およびin vitroにおける結合実験により、AIPはTom20のカルボキシル末端にある酸性残基に富む領域に特異的に結合することが示された。次に、AIPがミトコンドリアへのタンパク質輸送に関与する可能性を検討した。過剰のAIPはオルニチントランスカルバミラーゼ前駆体(pOTC)の単離ミトコンドリアへの取り込みを阻害した。一方、AIPをpOTCとともに培養細胞内で共発現させると、pOTCの合成量が増加し、ミトコンドリアへの取り込み量も増大した。また、in vitroにおける結合実験から、AIPはpOTCのプレ配列に特によく結合することが示された。AIPはpOTCだけではなく多様な前駆体タンパク質にも結合することが示された。AIP上のTom20が結合する領域はpOTCのプレ配列が結合する領域と重複することが示唆された。以上の結果から、AIPは前駆体タンパク質およびTom20と相互作用することで、タンパク質のミトコンドリア輸送に関与していることが示唆された。
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