アクティブボード・11月

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2002年11月 1日 更新


アクティブボード・2002年11月

研究発表を行った学会;第75回日本生化学会大会
2002年10月14日〜17日(京都)
タイトル;ラット四塩化炭素肝障害モデルにおける分子シャペロンの誘導
発表者;李 光鐘(イ・クワンジョン) 氏
   (熊本大学・医学部・分子遺伝学講座 and 小児外科学講座)
Abstract;
 分子シャペロンは、細胞に加えられたさまざまなストレスに対して誘導され、細胞保護作用を示す。そのうち、hsp70ファミリーは通常の状態でも新生タンパク質の折り畳みやオルガネラへの輸送に働くとともに、ストレス時には変性タンパク質の巻き戻しや分解に働き、細胞死を抑制する。hsp70ファミリーの働きにはパートナーシャペロンであるDnaJ (hsp40) ファミリーが必要である。
 今回我々は、ラットの四塩化炭素 (CCl4) 肝障害モデルを用い、hsp70 (誘導型)、hsc70 (構成型) およびDnaJファミリーであるdj1 (hsp40/hdj-1/DjB1)、dj2 (HSDJ/hdj-2/DjA1)、dj3 (DjA2)、dj4 (DjA4) の誘導を解析した。また、hsp70/DnaJシャペロン系の前誘導により、肝障害が抑制できるか検討した。
 Wistarラット(6週)に20%四塩化炭素を1mg/kg腹腔内単回投与し、肝障害モデルを作製した。
 ラット肝臓の hsp70および DnaJファミリー mRNAs は CCl4投与後 6時間をピークとして誘導された。タンパクレベルでは hsp70、dj1、dj2 および dj4 は 12時間をピークとして著しく誘導された。hsc70 は中等度に、dj3 は軽度に誘導された。熱前処理によりhsp70/DnaJ シャペロン系を誘導後、CCl4を投与すると、血清トランスアミナーゼ活性の上昇が抑制され、肝臓保護作用を示した。
 今後は、hsp70/DnaJ シャペロン系によるCCl4誘導肝障害の抑制機序を明らかにしたい。


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