アクティブボード・2002年12月
研究発表を行った学会;第61回日本癌学会総会
2002年10月1日〜4日(東京)
タイトル;ヒト癌遺伝子産物Aurora-A kinaseの活性動態と分裂期における役割 Aurora-A is essential for early and late mitotic events in human cells
発表者;丸本 朋稔 氏
(熊本大学・医学部・腫瘍医学講座)
Abstract;
Aurora-Aは、多くの癌において遺伝子増幅が見られる20q13に染色体座位をもち、乳癌、大腸癌などで高発現している癌遺伝子として知られている。実際にAurora-AをRat1線維芽細胞に高発現させることによりtransformを誘導可能である。我々はAurora-Aの活性化機構と生理作用を詳細に解析した。まずAurora-Aの発現および活性は分裂期に顕著に上昇し、その活性はCdc2/cyclin Bの下流で制御されていることを明らかにした。さらに、G2後期に同調させたHeLa細胞に精製抗体を注入することによりその機能を阻害し、タイムラプス顕微鏡及び免疫染色を用いて分裂期における細胞の変化を解析したところ、中心小体分離の障害と異常な紡錘体形成がみられた。加えて染色体の赤道面への整列不全および細胞質分裂障害が観察された。細胞質分裂障害はM期中期以降に抗体を注入した時にも見られ、Aurora-Aの細胞質分裂作動分子への直接的な作用が考えられた。これらの所見よりAurora-Aは分裂期前期のみならず中後期でも細胞内の異なった部位で異なった基質をリン酸化することにより分裂期全体を調節している可能性があり、その制御異常は染色体不安定性を引き起こす原因になりうることが示唆された。
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