アクティブボード・1月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2003年 1月29日 更新


アクティブボード・2003年1月

研究発表を行った学会;第25回日本分子生物学会年会
2002年12月11日〜14日(横浜)
タイトル;線虫におけるヒト遺伝性疾患関連AAAファミリータンパク質の解析
発表者;山中 邦俊 氏
   (熊本大学・発生医学研究センター・細胞複製分野)
Abstract;
 ポリグルタミン病は原因遺伝子のCAGリピートが異常伸長することによって起こり、リピート数が35~40を越えると発病する。遺伝子産物の持つ伸長ポリグルタミン鎖は凝集体を形成しやすく、神経細胞死を誘導すると考えられている。線虫C. elegansでポリグルタミン鎖を発現させた場合も、鎖長が40を越えると凝集体を形成することが報告されており、興味深いことに、酵母Hsp104(AAA+ファミリーに属するシャペロン)を共発現させると凝集体形成が抑制される。しかし線虫ではHsp104ホモログの存在は確認されておらず、ポリグルタミンの凝集に関与する他のシャペロンの存在が予想される。一方、哺乳動物細胞で、AAAファミリータンパク質p97/VCPがポリグルタミン結合タンパク質として同定された。線虫には2種類の極めて類似したp97/VCPホモログ(C41C4.8とC06A1.1)と、近縁のタンパク質MAC-1が存在している。
 今回、私達はポリグルタミン凝集体形成とp97/VCPホモログとの関連性を検討した。線虫の体壁筋で蛍光緑色タンパク質(GFP)を結合した長さの異なるポリグルタミン鎖(polyQ32, 40, 56, 79)を発現させ、鎖長が40を越えると凝集体が形成されることを確認した。この凝集体は細胞質に形成され、胚発生の時期から観察された。ポリグルタミン凝集体形成が発生過程に及ぼす効果は特に認められなかった。このときC41C4.8, C06A1.1, MAC-1をそれぞれ共発現させると、いずれの場合にもpolyQ56凝集体形成は部分的に抑制された。polyQ79凝集体形成については効果が認められなかった。これらの結果は、p97/VCPおよびその近縁タンパク質(AAAシャペロン)とポリグルタミン凝集体形成との関連性を示唆している。神経細胞への影響を解析するため、ポリグルタミンを神経細胞で発現させる系も確立し解析を進めている。この場合も筋肉細胞と同様に鎖長40以上で凝集体形成が観察された。


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