アクティブボード・2003年1月
研究発表を行った学会;第25回日本分子生物学会年会
2002年12月11日〜14日(横浜)
タイトル;マウスETF/Tead2遺伝子の細胞特異的発現制御のメカニズム
発表者;田上 泰之 氏
(熊本大学・発生医学研究センター・神経発生分野)
Abstract;
TEFファミリーに属する蛋白質はTEAドメインと呼ばれる高度に保存されたDNA結合領域を持ち、発生や分化を制御する転写因子と考えられている。先に、我々がクローニングしたTEFファミリーに属するマウス embryonic TEA domain containing factor (ETF) /Tead2 遺伝子は、その発現がマウス胎児組織およびP19やF9などの胚性腫瘍幹細胞に顕著であり成体組織やNeuro2AとMIN6などの比較的分化した細胞では殆どみとめられないこと、そしてその細胞特異的発現を制御する127bpの領域が第1イントロン内に存在することを報告した。今回、ゲルシフトアッセイおよびレポーターアッセイを用いたその領域のさらなる解析により、127 bp断片は5’末端から117bpでも十分なエンハンサー活性を持ち、その中に存在するGCボックス(GGGGCGGGG)と近位と遠位の二つのダイレクトリピートをなすGAエレメント(GGGGGAGGGG)が中心的にETF遺伝子の細胞特異的発現制御に関わっていることがわかった。そして、ETF発現細胞ではGCボックスと遠位GAエレメントに転写因子Sp1が転写因子zinc finger-binding protein (ZBP)ファミリー蛋白質より優位に結合することによってエンハンサーとして機能し転写を活性化し、ETF非発現細胞では 二つのGAエレメントにZBPファミリー蛋白質がSp1より優位に結合することによって転写を抑制しているというモデルが考えられた。また、ヒトゲノムプロジェクトによってシークエンスされた第19番染色体に存在するマウスETF/Tead2遺伝子のヒトホモログのエンハンサー相同領域は、GCボックスと近位および遠位GAエレメントいずれも高度に保存されているばかりでなく、エンハンサー活性も有していた。このことはこのエンハンサーがETFの特異的発現制御に重要であり、そのため進化的に保存されたことを示唆している。
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