アクティブボード・3月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2003年 3月 1日 更新


アクティブボード・2003年3月

研究発表を行った学会;日本免疫学会学術集会
2002年12月4日〜6日(東京)
タイトル;アダプター蛋白質LnkによるAGM造血の阻害
発表者;信久 幾夫 氏
   (熊本大学・発生医学研究センター・転写制御分野)
Abstract;
 マウス胎生期での成体型造血は、パラ大動脈臓側中胚葉(p-Sp)/大動脈-生殖原基-中腎(AGM)領域を場として、血管内皮様の細胞集団を起源とすると考えられている。SCFの受容体c-Kitのキナーゼドメインに結合するアダプター蛋白質として知られるLnkの遺伝子を欠損したマウス成体に於いては、B前駆細胞や造血前駆細胞の増加が報告されている。本研究では胎生期AGM造血におけるLnk蛋白質の機能を解析した。まずLnkはAGM造血期では大動脈内皮細胞に発現を認めた。そこで、血管内皮様の細胞から血球分化を再現する1つの系であるマウス胎仔のAGM領域の分散培養にGFPと共にLnkをレトロウイルスベクターで導入すると、対照GFPのみの導入と比べ、Lnkを導入したものは輩出してくる血液様細胞中の幼若な血球のマーカーCD45を発現する浮遊細胞の減少が起きた。また、この血球分化阻害効果にはLnkのSH2ドメインが必須であることが解った。AGM培養にLnkを導入して得た浮遊細胞についてコロニーアッセイを行うと、Lnk非導入時に通常多数出現するべきコロニーが全くみられなかった。さらに、Lnk遺伝子ホモ欠損胎仔のAGM分散培養では、同腹仔のヘテロ接合体AGMと比べて、胎仔あたり約3倍のCD45陽性細胞の輩出が確認された。また、AGMを直接造血コロニーアッセイを行うと、同腹仔のヘテロ接合体と比べてホモ接合体では、約2倍のコロニーの形成が確認された。これらの結果から、Lnkがマウス胎生期のAGM造血を負に制御する分子であることが示唆された。


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