アクティブボード・4月

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2003年 3月30日 更新


アクティブボード・2003年4月

研究発表を行った学会;日本免疫学会学術集会
2002年12月4日〜6日(東京)
タイトル;抗原とケモカインを共発現するES細胞由来樹状細胞の樹立
発表者;松吉 秀武 氏
   (熊本大学・医学薬学研究部・免疫識別学講座)
Abstract;
 我々は樹状細胞(DC)に抗原ならびに免疫制御遺伝子を導入し、これをin vivo投与することにより免疫応答を抗原特異的に制御する方法の開発をめざしている。DCに抗原遺伝子と共にケモカイン遺伝子を発現させることにより、生体内に移入したDCの存在する局所へT細胞を遊走させ、抗原特異的免疫応答を増強できる可能性が考えられる。
 本研究においてマウスES細胞に、T細胞を遊走させるケモカイン遺伝子(SLC, MigあるいはLymphotactin)とモデル抗原(卵白アルブミン:OVA)遺伝子を導入した後にin vitroで樹状細胞(ES-DC)に分化させ、これを生体内に投与した。これらの遺伝子改変ES-DCが効率よく抗原特異的T細胞の応答を増強できるかどうか調べ、さらにモデル抗原を発現させた腫瘍を拒絶する免疫応答の誘導能について比較検討することを目的とした。
 OVAおよびケモカイン遺伝子を、ともに発現させたマウスES-DCを腹腔内投与し、その in vivo におけるCTL誘導能を検討した。3種類のケモカインを発現するES-DCのいずれもが抗原特異CTLをより効率よく誘導したが、SLCが最もその効果が大きかった。腫瘍拒絶効果を評価したところ、OVA 遺伝子のみを発現させたES-DCを腹腔内投与することにより、OVAを発現するB16メラノーマに対する有意な腫瘍増殖抑制効果が観察された。さらにSLC遺伝子を発現させることにより、その効果が著明に増強された。
抗原およびケモカイン遺伝子を、ともに発現させたES-DCを使用することにより、抗原特異的免疫制御療法の増強が可能であると考えられた。


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