アクティブボード・4月

熊本大学・遺伝子実験施設
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2003年 3月31日 更新


アクティブボード・2003年4月

研究発表を行った学会;日本免疫学会学術集会
2002年12月4日〜6日(東京)
タイトル;B細胞特異的GANP欠損マウスにおけるB細胞分化異常
発表者;桑原 一彦 氏
   (熊本大学・医学薬学研究部・免疫学講座)
Abstract;
【目的】T細胞依存性抗原の免疫応答におけるクラススイッチ、体細胞突然変異など起こる解剖学的領域として胚中心(GC)が知られている。我々は、GCで発現が上昇する核内因子GANPを同定し、この分子が1) DNA複製に必須の分子MCM3と結合すること、2) p49とは異なる新規DNAプライマーゼであること、を明らかにしてきた。B細胞分化におけるGANPの役割を解析するために、Cre-loxPシステムを用いてB細胞特異的にGANPを欠損させたマウス(ganp B-KOマウス)を作製し、B細胞分化におけるGANPの役割を検討した。
【方法及び結果】開始コドンを含むエクソン2の両端にloxPシークエンスを挿入したコンディショナルGANP欠損マウスを作製し、CD19プロモーター制御下にCreリコンビナーゼが発現するノックインマウスと交配し、ganp B-KOマウスを作製した。このマウスは骨髄及び末梢リンパ細胞の分化、発達においては一見正常であると思われた。血清抗体価、Igクラスの量には差はなく、骨髄でのプロB細胞、プレB細胞から脾臓でのIgM+ B細胞の出現は正常であった。しかし、末梢リンパ節のIgM+からIgD+への成熟に明らかな障害が認められ、IgMlowIgDhighの成熟型B細胞の出現が著しく低下していた。さらにT細胞依存性抗原で免疫したところ、ganp B-KOマウスの脾臓でのGC形成が著しく遅れ、またGC形成数も著減していた。通常の免疫応答が終息する時に出現し始めるGC形成は逆にそのサイズが大きく、数が著しく増加していた。この結果は、GANP分子がGCでのB細胞クローン増大を制御し、免疫応答を適正に保つ役割を果たしていることを示唆している。


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