アクティブボード・5月

熊本大学
生命資源研究・支援センター
遺伝子実験施設

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2003年 5月 1日 更新


アクティブボード・2003年5月

研究発表を行った学会;第25回日本分子生物学会年会
2002年12月11日〜14日(横浜)
タイトル;bHLH型転写因子OLIG2による神経上皮細胞からアストロサイトへの分化抑制機構
発表者;福田 信治 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 転写制御分野)
Abstract;
 中枢神経系を構成する主要の細胞種であるニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトは共通の前駆細胞である神経幹細胞から分化する。この過程には種々の転写因子が関わっており、Mash1やNeurogeninを始めとするbHLH型の転写因子はニューロンの分化に、STAT3やSmad1はアストロサイトへの分化に関与することが知られている。最近になって新しいクラスのbHLH型転写因子であるOLIG1、OLIG2がクローニングされ、OLIG1/2ダブルノックアウトマウスではアストロサイトが過剰に生じていることが示された。我々はOLIG2がアストロサイトへの分化に対して抑制効果を持つとの仮説のもと解析を進めたので報告する。神経幹細胞を多く含むと考えられる胎生期14.5日マウス終脳から得られる神経上皮細胞はleukemia inhibitory factor (LIF) 存在下4日の培養でglial fibrillary acidic protein (GFAP) 陽性アストロサイトへ分化する。そこでLIF刺激後のGFAP promoterに対する影響を調べたところ、OLIG2はこのpromoterからの転写を抑制した。次にLIFに応答したGFAP遺伝子転写活性化に関与するSTAT3-p300複合体とOLIG2との相互作用を調べたところ、OLIG2はp300と相互作用してSTAT3とp300の結合を阻害した。またレトロウイルスベクターにてOLIG2を強制発現させるとGFAP陽性アストロサイトの出現が減少した。さらに内在性のOLIG2蛋白質の発現はLIF処理によって誘導されるアストロサイトの核から消失していた。これらの結果から、OLIG2はアストロサイトへの分化に対して抑制的に機能する因子であり、その作用メカニズムとしてOLIG2がSTAT3-p300転写活性化複合体の形成を阻害することが示唆された。


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