アクティブボード・2003年5月
研究発表を行った学会;第6回基盤的癌免疫研究会総会
2002年 7月16日〜17日(久留米)
タイトル;SEREX法による新規cancer/testis抗原の同定と特異的CTLの誘導
発表者;門司 幹男 氏
(熊本大学・医学薬学研究部 免疫識別学分野)
Abstract;
[目的] 手術療法、化学療法等の発展にもかかわらず、あまり治療成績の向上が認められない頭頚部癌を対象としてSEREX法を用いて新しい癌関連抗原を同定し、診断や治療に応用することを目的とする。
[方法と結果] 1)頭頚部扁平上皮癌細胞株と正常精巣から2種類のcDNAライブラリーを作製し、6例の頭頚部扁平上皮癌患者血清を用いて約1千万クローンの遺伝子をスクリーニングし、19種類の陽性クローンを得た。2)19種類の遺伝子についてRT-PCR法、northern blot法にて正常組織と癌組織での発現量を解析し、2種類の新規cancer/testis抗原を同定した。1つはKM-HN-1と名付けた新規遺伝子であり、もう1つはcasein kinase gamma 1 Sであった。3)KM-HN-1の遺伝子は4番染色体上に位置し、833 a.aからなるタンパク質でcoiled coil domainとleucine zipper motifを含んでいる。正常組織では精巣のみに発現が限られているが、癌組織では舌、甲状腺、胃、膵臓で発現していた。4)casein kinase gamma 1 Sは正常組織では精巣にしか発現を認めないが、癌組織では舌、顎下腺、甲状腺、膵臓に発現を認めた。またcasein kinase gamma 1 Sにはcasein kinase gamma 1 Lというisoformがあり、casein kinase gamma 1 Lはユビキタスに発現する遺伝子である。5)2種類のcancer/testis抗原について14種類のHLA-A24結合モチーフをもつ9あるいは10merペプチドを合成しHLA-A24陽性の健常人の末梢血単核球を刺激したところ数種類のペプチドに対してペプチド特異的なIFN-γの産生と、頭頚部癌細胞株に対してHLA-A24拘束性の細胞傷害活性を示すCTLの誘導を認めた。
[結語] 新たに同定した2種類のcancer/testis抗原は癌細胞傷害性CTLの認識抗原となりうることが明らかとなった。現在、頭頚部癌を中心に癌患者PBMCを用いて同様のCTLが誘導可能か否か検討中である。
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