アクティブボード・2003年5月
研究発表を行った学会;第25回 日本分子生物学会年会
2002年12月11日〜14日(横浜)
タイトル;マウスRho family GTPase (ArhA)遺伝子の機能解析
発表者;荒木 正健 氏
(熊本大学 生命資源研究・支援センター バイオ情報分野)
Abstract;
低分子量Gタンパク質Rhoファミリーは、細胞骨格系の再構築を司る分子スイッチであり、生理的な細胞形態変化を可能にしている。我々は可変型ジーントラップ法を用いてマウスRhoA (ArhA)遺伝子が破壊されたESトラップクローン(Ayu17-52)を作製した。キメラマウス及びヘテロマウスを作出し、レポーター遺伝子(beta-geo)の発現を調べたところ、調べた臓器全てにおいて強い発現を確認した。表現型としては、ヘテロ接合体において両前肢の握力に異常がみられ、食餌困難により死に至るケースが認められた。
5'-RACE法及びプラスミドレスキュー法を用いた解析により、Ayu17-52クローンでは、トラップベクターがRhoA遺伝子の開始コドン直前に挿入されていることが分かり、挿入の際に大きな欠失などが起きていないことも確認した。従って、このラインではベクター挿入によりRhoA遺伝子のみが破壊されており、その発現低下が前肢の異常を引き起こすことが示唆された。
そこで、Cre-変異loxシステムを用いて、酵母菌(Saccharomyces cerevisiae)Rho1遺伝子をノックインしたESクローン(Ayu17-52res)を作製した。これまでに、15匹のキメラマウスを作出したが、上記異常は観察されておらず、酵母Rho1遺伝子の発現によってマウスRhoA 遺伝子発現低下による表現型がレスキューされたと考えられる。このことは、ファミリーを構成している遺伝子がその機能をお互いに代償できるかどうかを調べる方法として、可変型ジーントラップ法が非常に有効であることを示している。
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