熊本大学
生命資源研究・支援センター
遺伝子実験施設
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2003年 7月 7日 更新
アクティブボード・2003年6月研究発表を行った学会;第61回日本癌学会総会2002年10月1日〜4日(東京) タイトル;m-calpainは分裂期の染色体整列におけるpolar ejection forceに必要である 発表者;本田 志延 氏 (熊本大学 大学院医学薬学研究部 腫瘍医学分野) Abstract; calpain familyは、カルシウム依存性のシステインプロテアーゼであり、古くからさまざまな生命現象への関与が報告されており、おもに標的分子の限定分解を介して、細胞周期、細胞接着・運動、細胞死、シグナル伝達などを制御しているとされる。ubiquitous calpain として、mu-calpain, m-calpain と呼ばれる2つのアイソフォームが知られており、in vitro でのカルシウム要求濃度が、それぞれ10-50mM、300-350mMである。このうちm-calpainはこのように高濃度のCaを必要とすることから、細胞内Ca濃度が急激に上昇する分裂期に何らかの役割を持つことが予測され、過去においてもいくつかの報告がなされてきたが、詳細は不明のままである。我々はHeLa細胞を用い、m-calpain mRNAに対するRNAiおよび特異的カルパイン阻害剤の分裂期に対する影響を調べた。その結果、両実験系において、m-calpain の阻害により、染色体の赤道面への整列の不全を伴う分裂期の遷延が認められた。また、いずれの系においても正常な紡錘糸形成が認められ、整列不全はモーター蛋白の機能不全であることが考えられた。中心体分離阻害剤monastrol 存在下にカルパインを阻害すると、中心体から染色体を遠ざけようとする力polar ejection forceの減弱が認められた。polar ejection forceはモーター蛋白Kidによっておもに生み出される力で、赤道面への染色体整列及びその維持に必要である。我々がおこなったin vitro proteolysis assayにおいてGST-Kid がm-calpainによって分解を受けることから、m-calpainがKidのturnoverを介して染色体整列に関与していることが示唆された。 |