熊本大学
生命資源研究・支援センター
遺伝子実験施設
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2003年 8月 7日 更新
アクティブボード・2003年8月研究発表を行った学会;第36回日本発生生物学会2003年 6月11日〜13日(札幌) タイトル;中胚葉におけるGata-2の発現と細胞運命 発表者;小川 峰太郎 氏 (熊本大学 発生医学研究センター 造血発生分野) Abstract; 細胞系譜としての個体発生は多能性の減少と多様性の増加として捉えられる。多能性とは複数の分化プログラムが同一細胞中に混在しうる状態であり、多様性は細胞集団中における各プログラムの分布を表したものと考えることが可能であろう。ES細胞から分化誘導されたFlk1陽性中胚葉は、胚型赤血球、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、心筋細胞などに分化する前駆細胞を含む多能性と多様性が混在した細胞集団である。分化プログラムに基づいてこの多能性と多様性を定義することには重要な意義がある。本研究では、転写因子Gata-2の遺伝子座にGFP遺伝子をノックインしたES細胞を利用した試験管内分化系により、Gata-2を発現する中胚葉細胞の検出とその細胞運命の解析を行った。 ES細胞の分化系においてFlk1陽性中胚葉が出現すると同時にGata-2/GFP陽性画分が検出され、中胚葉発生のごく初期からその多様化が認められた。Gata-2/GFPの発現に基づいてFlk1陽性中胚葉を分画しその分化能力を検討したところ、Gata-2/GFP陰性中胚葉画分は血管内皮細胞と心筋(あるいは骨格筋)細胞への両分化能を持つ前駆細胞を含んでいたが、Gata-2/GFP陽性中胚葉画分ではこの能力は微弱であった。一方、胚型赤血球への分化能はGata-2/GFP陽性画分の方に強く認められた。血管内皮細胞への分化能はGata-2/GFP陽性画分のほうがやや優位であるが大きな差はなく、血管内皮細胞を経由する成体型血液細胞への分化能も同様の傾向を示した。以上の結果から、Flk1陽性中胚葉におけるGata-2遺伝子の発現は心筋(あるいは骨格筋)細胞への分化能と排他的であり、胚型赤血球への分化能と相関することが示唆された。 |