熊本大学
生命資源研究・支援センター
遺伝子実験施設
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2003年 8月 7日 更新
アクティブボード・2003年8月研究発表を行った学会;第36回日本発生生物学会2003年 6月11日〜13日(札幌) タイトル;可変型遺伝子トラップ法を用いた遺伝子置換によるアンチセンスRNA発現の効果 発表者;春名 享子 氏 (熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野) Abstract; 我々は、Cre/変異loxシステムを用いて遺伝子置換の可能な可変型遺伝子トラップシステムを開発してきた。このシステムは従来の遺伝子トラップ法を発展させたもので、今回はその応用実験系の一例について報告する。 遺伝子トラップ法では、ベクターがES細胞の染色体の任意の位置に組み込まれることと、特にトラップベクターpU-Hachiはinternal ribosomal entry site(IRES)を用いているため、しばしばトラップベクターが遺伝子の後半に挿入し、その機能を破壊できないことがある。そのような場合でも置換によりトラップされた遺伝子の機能を破壊、又は、大幅に低下させることを目的として、トラップベクターの可変領域にトラップされた遺伝子のアンチセンス配列の挿入を行った。トラップされた遺伝子が転写される際に挿入した配列が引き続いて転写されると、この遺伝子の内在性部分由来のRNAが挿入部分に由来する相補的なRNAと高次構造を形成し、その遺伝子の翻訳を阻害すると考えた。 ベクターの可変領域に挿入するアンチセンス配列のサイズによる影響も検討するためにトラップした遺伝子(crk)のアンチセンスcDNAの置換用ベクターをサイズ別に2種類作製し、そのそれぞれをエレクトロポレーションによってトラップクローンにCre発現ベクターと共に導入した。8割以上の確率で置換が起こり、Cre/変異loxシステムが非常に効率よく働いていることを示した。この置換したESクローンからキメラマウスを作製し、サイズの大きいアンチセンス配列を挿入したクローンのみでマウス系統を樹立することができた。このマウス系統でのヘテロ、ホモマウスの解析を行い、アンチセンス導入効果を検討したところ、ホモ個体では挿入アレルに由来する転写産物が消失しており、アンチセンス配列を導入したことでmRNAが不安定化、分解されていると考えられた。 |