研究発表を行った学会;第4回 文部科学省特定領域研究「がん」6領域 若手研究者ワークショップ
2003年 8月27日〜30日(長野)
タイトル;細胞周期制御因子Cdh1の機能抑制による放射線・抗癌剤感受性増強
発表者;太田 陽介 氏
(熊本大学 大学院医学薬学研究部 腫瘍医学分野)
Abstract;
APC(anaphase-promoting complex/cyclosome)は分裂期においてサイクリンBやセクリンなどのタンパク群をユビキチン化し、その分解を誘導することにより細胞周期を進行させる役割を持つ。Cdh1はAPCと基質の結合を仲介し、APCの基質特異性を決定づける重要な因子であることが知られている。我々はニワトリBリンパ腫細胞において、APC-Cdh1複合体の活性化が分裂後期の進行のみならず、放射線照射や抗癌剤によるDNA損傷時に誘導されるG2期停止(DNA損傷チェックポイント)にも必要であることを既に報告している。今回我々はヒト癌細胞において、dominant negative Cdh1の過剰発現、あるいはRNAiによってCdh1の発現を抑制することにより、放射線照射下でDNA損傷G2チェックポイントの不全が生じ分裂死が誘導されること、あるいは不均等分裂から異常核を持つ細胞に変化することを明らかにした。APC-Cdh1によるDNA損傷G2チェックポイント機能は多くの癌細胞において保たれており、その機能を阻害することで放射線照射や抗癌剤の効果を著明に増強できることが示されたことから、Cdh1は癌治療の分子標的となりうる。
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