アクティブボード・2003年12月

     ・・・・・2003年12月4日更新・・・・・

研究発表を行った学会;第24回日本炎症・再生医学会
   2003年11月26日〜27日(京都)
タイトル;敗血性腹膜炎モデルにおけるCCケモカインリセプタ−8の機能解析
発表者;松川 昭博 氏
   (熊本大学 大学院医学薬学研究部 機能病理学分野)
Abstract;
 感染時の自然免疫にTh1-タイプの反応が重要であることはよく知られている。我々は敗血性腹膜炎モデルを用いて、感染局所の細菌排除にIFNγ, IL-12といったタイプ1サイトカインやMCP-1, MDC, C10などのCCケモカインが中心的な働きを果たすことを示してきた。CCケモカインリセプタ−8(CCR8)は主にTh2反応に関わるとされており,自然免疫へのその関与は不明であるが,我々は腹腔常在マクロファージがCCR8を発現することを見いだしている。今回,敗血症時の自然免疫におけるCCR8の作用を,CCR8-/-マウスを用いて検討したので報告する。敗血性モデルは腸管穿孔モデル(cecal ligation and puncture:CLP)を用いた。このモデルではマウスは敗血症に陥り高率に死亡する。一方,CCR8-/-マウスはCLP に対し極めて抵抗性を示した。この時,腹腔内および血中の細菌数を調べると,CCR8-/-マウスは有意に低い菌数を示し,同マウスでは菌のクリアランスが増加しCLP抵抗性であると考えられた。in vitroの実験から,CCR8-/-マクロファージはコントロールに比べ有意に高い殺菌能を示すことが判明した。腹腔マクロファージのLPS刺激培養上清中のTNFα, IL-12, KC, MIP-2, MDC産生はCCR8-/-マウス由来マクロファージで有意に増加しており、また,細菌排除に働く分子であるス−パ−オキシド, ライソソ−ム酵素および一酸化窒素産生もCCR8-/-マクロファージでは有意に高かった。以上より,CCR8-/-マウスでは局所の免疫反応はTh-1タイプに大きくシフトし、同マウスは細菌排除に都合の良い表現型を示すことが判明した。この結果は,CCR8の発現は自然免疫時の生体防御機構に影響をおよぼすこと,その合目的的な発現調節は治療抵抗性の疾患である敗血症の治療戦略にあらたな選択肢となる可能性を示唆している。現在,より詳細なメカニズムについて解析中である。


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