研究発表を行った学会;第26回日本分子生物学会年会
2003年12月10日〜13日(神戸)
タイトル;CD41を指標とする血管内皮細胞の血液細胞への分化能の解析
発表者;橋本 和明 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 造血発生分野)
Abstract;
血液細胞系譜の発生経路モデルとして中胚葉細胞は一次造血に相当する胚型赤血球に直接分化する。一方中胚葉細胞は血管内皮細胞にも分化し、血管内皮細胞から二次造血に相当する成体型造血細胞に分化すると考えられている。我々は血液細胞への分化能を持つ血管内皮細胞について詳細な解析を行うために成体型造血の指標として現在注目されているCD41を指標として実験を行った。ES細胞をストローマ細胞であるOP9細胞上に播き血管内皮細胞に分化させてFACSにより解析を行った結果、血管内皮細胞画分であるCD31陽性VE-cadherin陽性CD45陰性細胞集団はCD41陽性とCD41陰性の2つの細胞集団に分けることができた。次にこれらの細胞集団の発生起源を調べるために経時的な解析を行った。側板中胚葉のマーカーであるFlk1と沿軸中胚葉のマーカーであるPDGFレセプターαを指標としてFACSを用いて解析を行った結果、2つの細胞集団はFlk1陽性細胞から同時に現れるのを確認した。この事からこれらの細胞集団は側板中胚葉を経由して異なった発生経路で分化している細胞集団であると考えられる。次にそれぞれの細胞集団の血液・血管内皮細胞への分化誘導実験を行った。両方の細胞集団において赤血球、骨髄球、顆粒球系を含む成体型血液細胞への分化が確認でき、VE-cadherin陽性の血管内皮細胞コロニーの形成も確認できた。しかしながらCD41陽性細胞集団はCD41陰性細胞集団に比べて血液・血管内皮細胞分化能は低下していた。特にBリンパ球細胞分化能は著しく低下していた。したがってこれら2つの細胞集団は発生において異なった発生経路で分化し、異なる役割を担っていると考えられる。
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