研究発表を行った学会;第4回熊本エイズセミナー
2003年9月5日〜6日(熊本)
タイトル;NefタンパクによるHLA Class I分子の発現低下とHIV-1特異的CD8T細胞のウイルス抑制能への影響
発表者;藤原 守 氏
(熊本大学 エイズ学研究センター ウイルス制御分野)
Abstract;
HIV-1陽性患者では感染当初、HIV-1特異的細胞傷害性T細胞が多く誘導されるにも関わらず、HIV-1ウィルスは体内から完全に排除されず、抗ウィルス治療を行わないと、最終的にはAIDSの発症にいたる。HIV-1の傷害性T細胞(CTL)からの逃避機構の一つとしてNefタンパクによるHLA class I分子の発現低下がよく知られている。HIV-1感染細胞は、HLA class I分子の発現低下によってCTLから認識されにくく、その細胞障害活性を回避する機構を持っている。本研究では、Nef陽性株、NL-432とHLA class I分子の発現低下を起こさないNef変異株, NL-M20Aを用いて、複数のHLA-A*3303拘束性HIV-1特異的CTLクローンのHIV-1ウィルス複製に対する抑制効果について検討した。
5つのHLA-A*3303拘束性Env830-837, Env697-706, Gag144-152, Pol594-602, Pol60-70特異的CTLクローンをNL-432またはNL-M20Aに感染直後のHLA-A*3303陽性CD4陽性T細胞と共培養する。その後、フロ−サイトメトリ−とELISAでウィルスの増殖を経時的に測定した。また、感染細胞に対する細胞障害活性を51Crリリースアッセイを用いて解析した。
感染細胞とCTLクローンを共培養することによって、NL-M20Aに対して約70%の増殖抑制効果が認められた。一方、NL-432に対する増殖抑制効果は10〜40%にとどまった。また、HIV-1特異的CTLクローンが、NL-432感染細胞を殺すことができないことから、これらのCTLクローンも液性のウィルス抑制因子を産生している可能性が示唆された。これらの点については現在更に検討中である。以上の結果より、NefタンパクによるHLA-class I分子の発現低下がCTLクローンの細胞障害活性とHIV-1増殖抑制能に大きな影響を与えていることが複数のHLA-*3303拘束性HIV-1エピト−プ特異的CTLクローンにおいて明らかとなった。
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