研究発表を行った学会;日本発生生物学会第37回大会
2004年6月4日〜6日(名古屋)
タイトル;生殖細胞で特異的に発現するXtr(Xenopus tudor repeat)遺伝子の発現制御機構解析
発表者;高宗 和史 氏
(熊本大学 理学部 理学科)
Abstract;
Xtrタンパク質は、Xenopus卵母細胞の第二減数分裂や卵割の分裂制御に関与するタンパク質である。この遺伝子の転写産物は、生殖細胞と初期胚にのみ存在している。特に、精子形成過程において、体細胞分裂を行っていた精原細胞が減数分裂へと分裂様式を変更する能力を獲得する時期にXtr mRNAの量が急増するといった興味深い発現様式を示す。このことは、Xtr遺伝子の発現制御が生殖細胞分化、及び減数分裂期移行能力獲得と密接に関連していることを示唆している。我々は、生殖細胞の特性、中でも体細胞分裂を行っていた生殖細胞が減数分裂へと分裂様式を変更する現象に着目し、Xtr遺伝子の発現制御機構解明を通して生殖細胞の特性を明らかにすることを目指している。その為に今回、まずゲノムDNAの解析と精製翻訳産物のN末端解析により、翻訳開始点を決定した。次に、この翻訳開始点から5,399塩基対上流のゲノムDNAと蛍光タンパク質(Venus)遺伝子を連結した組換え遺伝子を構築し、これを用いてXenopus transgenic個体を作成した。変態後2か月齢のF1個体を用いてVenusタンパク質の発現を観察したところ、雌雄両生殖細胞でのみ発現が認められた。この個体を用いてVenus mRNAの発現をRT-PCRにより調べたところ、僅かではあるが心臓や脾臓など生殖巣以外でも発現が観察された。これらの結果は、今回調べたXtr遺伝子5ユ上流域には、1)生殖細胞でのXtr遺伝子の発現を保証する領域は全て含まれている、2)発現を生殖細胞だけに限定するための領域が一部欠けている、ことを示している。また、生殖巣のin situ hybridization解析により、1)生殖細胞だけにVenus mRNAが存在している、2)Xtr mRNAと同様に後期第二精原細胞でその量が増加している、3)Xtr mRNAと異なり、初期第二精原細胞にも比較的多くのVenus mRNAが存在している、ことが明らかになった。これらの結果から、今回調べたDNA領域に、減数分裂期移行能力を獲得した第二精原細胞でXtr遺伝子発現をup-regulateするための制御領域が含まれていると予想できた。しかし、精子形成過程を通したXtr mRNAとVenus mRNAの存在量の変動に微妙な違いがあることから、この発現を制御する領域の欠如、もしくはXtr mRNAとVenus mRNAの安定性に違いがあることの可能性が示唆された。
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