研究発表を行った学会;第51回日本実験動物学会総会
2004年5月20日〜22日(長崎)
タイトル;透明帯穿孔卵子を用いたマウス凍結融解精子の体外受精成績について
発表者;柳 美穂 氏
(アーク・リソース株式会社、
熊本大学 生命資源研究・支援センター 資源開発分野)
Abstract;
【目的】
近年、遺伝子改変マウスの系統維持には、精子の凍結保存が注目されている。しかし凍結保存したC57BL/6系統のマウス精子において、融解後の運動性および受精能が極めて低いのが現状である。
一般的に、これら精子を用いて体外受精を行なう場合には、透明帯切開法(PZD)が用いられているが、一度に大量の透明帯切開卵子を作製できないなどの問題がある。
そこで本実験では、透明帯穿孔卵子を作製し、凍結融解精子を用いて体外受精を行ない、得られた胚の産子への発生について検討を行なった。さらに、透明帯穿孔卵子の凍結保存も行い、同様に検討した。
【材料および方法】
透明帯穿孔卵子の作製には、成熟したC57BL/6J雌マウス(日本クレア)を用いた。過排卵処理後、採取した未受精卵は、ヒアルロニダーゼにて卵丘細胞を除去後、レーザー装置を用いて透明帯に穿孔(直径12μm)を行なった。また作製した穿孔卵子の一部は、簡易ガラス化法を用いて凍結保存を行なった。
精子の凍結保存には、同系統の成熟雄マウスの精巣上体尾部より採取した精子をNakagataの方法(1992)を用いて行なった。
透明帯穿孔卵子および凍結融解した透明帯穿孔卵子は、凍結融解した精子を用いて体外受精を行なった。また得られた2細胞期胚は、偽妊娠第1日目の受容雌(ICR:日本クレア)の卵管に移植した。
なお、PZDを行い、同様に体外受精を行なったものを対照区とした。
【結果】
透明帯穿孔卵子と凍結融解精子間での体外受精率は、70.5%、産子への発生率は、24.3%であり、対照区のPZDと比較しても大きな差は認められなかった。一方、凍結した透明帯穿孔卵子の融解成績は、回収率87.6%、生存率53.3%と若干低い値を示したが、体外受精率は、69.1%、産子への発生率は、23.1%であった。
以上より、透明帯穿孔卵子を用いた体外受精および個体作製は可能であり、凍結融解精子を用いた個体作出における1つの手段となることが示唆された。
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