研究発表を行った学会;第63回日本癌学会学術総会
2004年 9月29日〜10月 1日(福岡)
タイトル;がん抑制タンパクWARTSによる細胞死誘導機構
発表者;國仲 慎治 氏
(熊本大学 大学院医学薬学研究部 腫瘍医学分野)
Abstract;
近年、発生過程における適切なサイズコントロールを司る遺伝子群がショウジョウバエにおいて同定され、それらは細胞周期と細胞死の双方を制御することが明らかになっている。この遺伝子群の多くはヒトまで高度に保存され、癌において変異や発現抑制が認められことから、サイズコントロール制御の破綻と発癌の関係が注目されている。それらのうち、warts遺伝子の変異は最も強いサイズ異常を誘導することから、wartsはサイズコントロールの極めて重要なエフェクターであると考えられている。我々はwartsのヒトホモログWARTSが、細胞分裂進行に重要な役割を果たしていること、細胞死誘導セリンプロテアーゼOmi/HtrA2と結合することを報告してきた。今回新たにWARTSのOmiを介した細胞死制御機構の詳細について検討した。RNAiや過剰発現系を用いた解析で、WARTSがOmi誘導細胞死を正に制御することが示唆され、生化学的にもWARTS存在下でOmiプロテアーゼ活性の増強が認められた。以上よりWARTSとの結合がOmiの活性化、即ち細胞死誘導に重要であることが明らかになり、WARTSはショウジョウバエ同様に細胞周期と細胞死の双方を制御することで腫瘍形成を抑制していると考えられる。
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