アクティブボード・2004年12月

     ・・・・・2004年12月 2日更新・・・・・

研究発表を行った学会;The 2004 Kumamoto University COE Symposium on Cell Fate Regulation
2004年 6月 6日(熊本)
タイトル;TGF-beta signaling Potentiates Differentiation of Embryonic Stem cells to Pdx-1 Expressing Pancreatic Progenitor Cells
発表者;白木 伸明 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 幹細胞制御分野)
Abstract;
 ES細胞は、初期胚に由来する多能性幹細胞で未分化性、多能性を保持したままin vitroで安定して増殖可能であり、細胞系譜の決定、可塑性などの機構について段階を追って解析するよいシステムである。我々は、ES細胞から膵への発生分化の機序を明らかにするために、試験管内でES細胞から膵への分化誘導を再現できる系を構築してきた。このためには、pdx-1遺伝子座にLacZ遺伝子をノックインしたES細胞を用いている。このES細胞を用いる利点としては、LacZ染色で膵臓初期マーカーであるpdx-1遺伝子の発現を簡単に評価できる点である。中胚葉、外胚葉系細胞への分化にくらべると特異的誘導剤非添加条件下において、LacZ染色されるpdx-1発現細胞の出現率は非常に低い。我々は、まず初期の分化したマウスES細胞をマウス胎児の各臓器と共培養することにより膵幹細胞への分化誘導を試みた。検討の結果、マウス胎児の膵原基あるいは膵間葉系を共培養すると、膵幹細胞への分化誘導が促進されることを見いだした。また、各種液性因子の膵分化誘導に及ぼす影響について上記ES細胞を用いて評価した結果、ES細胞から膵幹細胞への誘導には液性因子としてTGF- b2が有効であった。さらに、いくつかの外来遺伝子をES細胞に強制導入し、安定に発現するES細胞株の膵臓への分化誘導に対する導入遺伝子の効果を調べた。その結果、内胚葉誘導因子の活性を持つニワトリのmix遺伝子をマウスES細胞内で強制発現することにより、膵への分化誘導を促進することができることを見いだし、その分化誘導効果はmixタンパクの発現量と相関した。また、TGF- b2はmix遺伝子強制発現したES細胞株においても膵への分化誘導を促進した。これらの結果は、TGF- b2とmix遺伝子の作用は別々のステップで聞いていることを示唆した。今回の検討において正常発生における内胚葉誘導をES細胞の系でも再現可能であることを示した。また、上述の膵臓への高誘導能を示すES細胞株と対照株についてジーンチップを用いた遺伝子網羅的解析を行っており、未分化状態のES細胞間の比較解析により、強制発現した遺伝子の下流遺伝子を同定できると考える。


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