研究発表を行った学会;第27回日本分子生物学会年会
2004年12月 8日〜12月11日(神戸)
タイトル;可変型遺伝子トラップ法により得られたCamta1変異マウスの解析
発表者;神吉 将之 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 臓器形成分野)
Abstract;
我々はCre-変異loxシステムを応用した可変型遺伝子トラップベクター、pU-17を用いて変異マウス系統(トラップライン)の作出及び解析を行ってきた。Ayu17-558 ESラインから樹立されたB6;CB-Camta1GtAyu17-558Imeg(Camta1Gt)マウスは、X-gal染色による発現パターン解析結果より、初期胚においては心臓や眼胞、神経管、成体マウスにおいては脳と脊髄の中枢神経系のみで染色が認められるラインで、4番染色体上のマウスCamta1 (calmodulin-binding transcription activator 1)遺伝子内にトラップベクターが挿入されている。Camta遺伝子にはファミリーが存在し、タンパク質の一次構造レベルにおいてCG-1domain、TIG domain、Ankyrin repeat、IQ calmodulin binding motifが保存されている。これまでにシロイヌナズナのCAMTA1タンパク質についてそれぞれのドメイン機能が調べられているが、哺乳類におけるCamta遺伝子についての詳細な遺伝子構造解析や機能解析は行われていない。そこで本研究では、マウスにおけるCamta1遺伝子の構造と機能を明らかにすることを目的に、Camta1遺伝子をトラップしているCamta1Gtマウスの解析を行った。
まずCamta1遺伝子の構造について解析を行った結果、現在データベースに登録されている構造とは異なり、24個のエクソンからなる遺伝子であることがわかった。またトラップベクターは第1エクソンの上流46bpの転写制御領域に挿入されていることがわかった。次にノザンブロッティングによる内在性のCamta1遺伝子転写産物について解析を行った結果、脳と心臓で発現が認められ、脳では心臓で検出される6kbの転写産物とともに、サイズの異なる9kbの転写産物が検出された。そこで脳特異的に検出されるアイソフォームをCamta1α、脳と心臓で検出されるアイソフォームをCamta1βと名付けた。
Camta1Gt/Gtマウスでは、トラップベクターの挿入によりCamta1αの発現が顕著に抑制されており、Camta1βの発現には影響がないことから、Camta1α、βはそれぞれ異なる転写制御領域から転写が開始している可能性が示唆され、5ユRACE法などの解析によりCamta1βの第1エクソンを同定した。またAyu17-558 ESクローンはCamta1α遺伝子のみをトラップしているが、Camta1Gt/GtマウスではCamta1α遺伝子の発現は完全に抑制されておらず、ハイポモルフなアレルになっている。
Camta1Gtマウスにおける表現型解析では、野生型マウスと比較してCamta1Gt/+マウスにおいて異常は観察されなかったが、Camta1Gt/Gtマウスにおいては出生後からの成長遅延が観察された。
本研究におけるCamta1Gtマウスを用いたCamta1遺伝子機能解析の結果、マウスCamta1遺伝子の遺伝子構造やアイソフォームの存在が明らかとなり、発現パターン解析と変異マウスにおける表現型解析から、Camta1遺伝子は初期発生段階から神経系を中心に機能を果たし、また成長を制御する機構に関与することが示唆された。
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