アクティブボード・2005年 4月

     ・・・・・2005年 4月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会;第27回日本分子生物学会年会
2004年12月 8日〜12月11日(神戸)
タイトル;遺伝子の転写とmRNA核外輸送の連携:転写不活性化によりmRNAは核内ドメインTIDRに蓄積する
発表者;徳永 和明 氏
   (熊本大学 理学部 理学科 谷研究室)
Abstract;
 我々は、mRNAの核外輸送過程を生細胞内で解析するため、HeLa細胞の核へ蛍光標識したmRNAをmicroinjectionするassay系を確立し、解析を進めてきた。昨年度の本学会で、蛍光標識Ftz pre mRNAは、核内でスプライシングを受けた後、成熟mRNAのみが効率よく細胞質へと核外輸送されること、及びcDNAから転写合成したftz mRNAは核内で分解されるかもしくは、核外へ輸送されるが速やかに分解される可能性を報告した。
 興味深いことに、actinomycin D, a-amanitin, DRBなどの転写阻害剤によって細胞を処理すると、マイクロインジェクションしたFtz pre mRNAの核外輸送が強く阻害された。しかも、輸送されなかったmRNAはスプライシング因子SC35が分布する核スペックルに隣接した核内ドメイン(TIDR : transcriptional inactivation-dependent RNA domain) に蓄積する。TIDRは、一部の核スペックルに隣接して存在するパラスぺックルの因子PSP1の分布とは一致しなかったことから、新規核内ドメインであると結論した。GST-NLS-NES-GFPマーカータンパク質を用いた解析を行ったところ、転写阻害はタンパク質の核内外輸送には影響しないことが示され、転写阻害による核外輸送の停止はmRNAに特異的であることが明らかとなった。また、in situ hybridizationによる解析から、内在性poly A+ RNAの核外輸送も転写不活性化によって阻害される可能性が示された。TIDRへの内在性poly A+ RNAの強い集積は転写不活性化の条件下では観察されなかったが、これらの結果は、遺伝子の転写とmRNAの核外輸送機構との間には密接な関連性が存在することを示唆している。


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