研究発表を行った学会；第２７回日本分子生物学会年会
２００４年１２月　８日〜１２月１１日（神戸）
タイトル；分裂酵母mRNA核外輸送温度感受性変異株ptr10の解析
発表者；石橋　綾子　氏
　　　（熊本大学　理学部　理学科　谷研究室）
Abstract；
　我々はmRNAの核外輸送過程に関与する因子群を同定すべく、分裂酵母mRNA核外輸送温度感受性変異株ptr (polyA+ RNA transport) を現在までに12株分離した。それらの変異株のうちptr10の解析を行なった。
　ptr10 変異株では polyA+ RNAの核への蓄積に加え、生育速度の遅延、細胞体の異常な伸長、セプタム形成の異常といった表現型も示した。U3 snRNA に対するプローブを用いた３重染色解析を行った結果、mRNA は ptr10 の核小体領域内に蓄積することが示された。また、ptr10変異株において、タンパク質の核・細胞質間輸送は正常であった。
　分裂酵母のゲノムライブラリーを用いた機能相補クローニングの結果、ptr10 遺伝子は DnaJ domain及びtransmembrane domainをもつ新規のタンパク質をコードしており、ptr10-1 ではナンセンス変異を生じていることが示された。ptr10遺伝子の欠失株を作製した結果、ptr10遺伝子は必須遺伝子ではないことが明らかとなった。また、Ptr10pタンパク質の細胞内局在を調べるため、Ptr10pとGFPの融合タンパク質を発現させたところ、核膜、小胞体膜などへの局在が観察された。
　ptr10欠失株における微細構造変化を調べるため、電子顕微鏡を用いた観察を行なったところ、核膜の異常は見られなかったが、クロマチン以外の核内領域にpolyA+ RNAと推定される非常に電子密度の高い物質が凝集している様子が観察された。
　次に、Ptr10pの細胞内機能を探るため、ptr10欠失変異のマルチコピーサプレッサーのスクリーニングを行なった。その結果、ptr10 欠失株の温度感受性を相補する遺伝子を含む2種類のDNA断片を分離したので、それらの解析の現状についても報告したい。