アクティブボード・2005年 4月

     ・・・・・2005年 4月 1日更新・・・・・

研究発表を行った学会;第27回日本分子生物学会年会
2004年12月 8日〜12月11日(神戸)
タイトル;脊椎動物におけるandrogen receptor遺伝子の進化
発表者;荻野 由紀子 氏
   (熊本大学 生命資源研究・支援センター 技術開発分野)
Abstract;
 Androgen receptor (AR) 遺伝子は、脊椎動物の有顎類の系統でPR遺伝子から遺伝子重複によって現れたと考えられている。androgenは、脊椎動物の内外生殖器あるいは外部形態などに現れる雄の二次性徴発現を誘導し、繁殖や性淘汰に直接的あるいは間接的な影響を及ぼす。我々は、真骨類であるカダヤシGambusia affinisの交接器(gonopodium)形成をモデルとして、脊椎動物の二次性徴発現の分子メカニズムについての解析を進めてきた。真骨類では2分子のAR 遺伝子、ARαおよびARβが存在しており、カダヤシ交接器形成過程において互いに異なった発現領域を示す。一方、四肢類ではAR遺伝子は1分子のみしか知られていない。今回我々は、脊椎動物におけるAR遺伝子の進化の過程について考察するために、新たに軟骨魚類であるイヌザメ (Chiloscyllium punctatum), 祖先型の硬骨魚類で軟質類に属するチョウザメ (Acipenser ruthenus x H.huso (bester))からAR遺伝子を5', 3'RACE法によって単離し、構造解析ならびに近隣結合法による分子系統解析を行った。DNA結合ドメイン、リガンド結合ドメインの演繹アミノ酸配列の相同性はイヌザメAR、チョウザメARともに四肢類および真骨類のARβに対して高く、ARαに対しては低かった。また得られた系統樹から、条鰭類の系統からチョウザメなどの軟質類が分岐した後の、真骨類に至る系統で生じた遺伝子重複によってARおよびARβ遺伝子がつくられたと予想された。イヌザメAR遺伝子は現時点の情報からは最も祖先型のAR遺伝子であり、その構造と機能の関係について解析を進めている。


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