研究発表を行った学会;日本発生生物学会第38回大会
2005年 6月 2日〜 6月 4日(仙台)
タイトル;TsukushiはcVg1と相互作用して原始線条の形成に関与する
発表者;太田 訓正 氏
(熊本大学 大学院医学薬学研究部 神経分化学分野)
Abstract;
ニワトリ胚の形づくりにおいて最初に観察される顕著な現象として,原始線条(primitive streak)形成が挙げられる。ニワトリ初期胚の後方帯域(posterior marginal zone)を切り取って他の帯域領域に移植すると、新たな体軸が形成されることから、この後方帯域はカエルのニュークープセンターに相当する特性を持つ領域である。
原条形成の分子メカニズムとして次のモデルが考えられている。ニワトリ初期胚(ステージX-XIII)の周辺部にはWnt8Cが発現して帯域を定義化し、後方部に局在して発現するcVg1との相互作用によって後方部から原始線条の形成が始まる。また、cVg1とWnt8Cを本来ならば原始線条を形成しない明域(area pellucida)に強制発現させると異所性の原始線条が誘導されることから、原始線条の形成にはcVg1とWnt8Cが関与していることは明らかである。しかしながら、異所性の原始線条は必ずしも誘導されるわけではなく、その誘導率が50-60%であることから、原始線条の形成に関わる他の分子の存在が示唆されていた。
Tsukushi (TSK) はニワトリ初期胚において後方帯域に局在した後、原始線条とヘンゼン結節に特異的に発現する分泌型BMPアンタゴニストである。我々はTSKがchordin, BMP4と複合体を形成して、オーガナイザー形成に関わる重要なコンポーネントの1つであることを報告した(第37回発生生物学会)。今回の発表では、以下の結果を報告する。1)TSKには2つのサブタイプ(C-TSKA & C-TSKB)が存在し、BMPアンタゴニストとしての活性はC-TSKAの方が強い。2)C-TSKA、C-TSKB共にcVg1と生化学的に結合する。3)gain-of-functionとloss-of-functionの実験から、C-TSKAとC-TSKBがcVg1と相互作用して、異所性の原始線条誘導を行う。
C-TSKAは主にBMPアンタゴニストとしてchordinと共にオーガナイザー形成に関わり、C-TSKBはVg1との相互作用により原始線条の形成に深く関与していることが示された。このようにTsukushiはニワトリ初期胚での形づくりにおいて重要な役割を持つ分子である。
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