研究発表を行った学会;日本発生生物学会第38回大会
2005年 6月 2日〜 6月 4日(仙台)
タイトル;肝臓発生時におけるGFRα2 / NRTNシグナルは肝芽の移動に関与する
発表者;辰巳 徳史 氏
(熊本大学 発生医学研究センター パターン形成分野、COEジュニアリサーチアソシエイト)
Abstract;
肝臓の発生初期段階である肝芽は、前腸内胚葉より生じ、周囲の横中隔間充織および血管内皮細胞との相互作用によって発生する事が知られている。現在までの組織学的な知見によりニワトリ胚の肝芽形態形成過程は、前腸内胚葉より生じた肝芽が横中隔間充識に突出し、静脈に沿って伸長する。その後静脈を取り囲み原始的な肝臓として構成されることが知られている。近年、マウスなどの実験結果により、前腸内胚葉における肝細胞への誘導メカニズムは明らかになりつつあるが、その後の形態形成過程においては未だに不明な部分が多い。特に肝臓形成に必須である内胚葉と血管内皮細胞の両者を結びつけるような分子メカニズムは未だ報告されていない。
近年、神経細胞の生存因子として同定されたGDNFとその関連因子の発現解析が行われ、GFRα2が肝発生領域で発現しているという報告がなされた。GFRα2のリガンドであるNeurturin (NRTN)は交感神経などにおいて軸索の誘引因子であることが知られている。肝芽でGFRα2が、静脈血管内皮細胞においてNRTNが発現していたことから、肝芽を誘引する因子である可能性が示唆された。このためシグナル伝達阻害実験を行った結果、肝芽の伸長が抑制され、またNRTNの異所的発現では肝芽がNRTN導入部位に誘引された。In vitroでの培養実験においてもNRTNビーズの方向に肝芽が誘引された。これらの結果から、GFRα2/NRTNは肝芽の移動に関連していることが示唆された。また、この結果は現在までに報告されていなかった血管内皮細胞から肝芽に働きかける液性因子の存在が明らかにした。さらに、内胚葉組織においてGFRα2の発現を制御すると考えられる転写因子についても解析を行ったのでここに報告したい。
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