アクティブボード・2005年10月

     ・・・・・2005年10月 3日更新・・・・・

研究発表を行った学会;日本発生生物学会第38回大会
2005年 6月 2日〜 6月 4日(仙台)
タイトル;マウス精巣におけるNeuregulinとerbBの発現及び機能
発表者;大隈 聖子 氏
   (熊本大学大学院自然科学研究科 安部研究室)
Abstract;
 精子形成は、脳下垂体から分泌される濾胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがそれぞれの受容体を発現する精巣内の体細胞を介して生殖細胞に作用し、その制御に中心的な役割を果たしていることが知られている。しかし、これらのホルモンの作用を受け取る体細胞と、増殖、分化する生殖細胞との間のシグナル伝達機構については不明な点が多い。
 Neuregulin(NRG)はチロシンキナーゼ受容体のerbBを介して細胞の増殖、分化に働く因子であり、生体内に広く存在することが知られている。しかし、NRG-erbBシグナル伝達系が精子形成に果たす生理的役割は明らかにされていない。そこで本研究では、マウス精巣におけるNRG、erbBの発現とマウス精原細胞の増殖に及ぼすNRGの効果を調べた。
 ほ乳類では4種類のNRG(NRG1-4)が同定され、これらには選択的スプライシングにより多くのisoformが存在する。erbBについても4種類(erbB1-4)が同定され、これらは二量体を形成して細胞内へシグナルを伝達する。
 mRNAレベルでの発現解析では、NRG1はセルトリ細胞で検出され週齢の進行に伴い減少しているのに対して、NRG3は生殖細胞、体細胞の両方で検出され週齢の進行に伴い増加していることが分った。また、erbB1とerbB4は生殖細胞と体細胞の両方で、erbB2/2は体細胞で検出され、これらの週齢による差異は認められなかったが、erbB2/2は生殖細胞と体細胞の両方で検出され、NRG1と同様に週齢の進行に伴い低下していた。免疫組織染色では、erbB2タンパク質が精巣内の全細胞に、erbB4タンパク質が生殖細胞に発現していることが分った。さらに、NRG1、NRG3の組み換えタンパク質を作製し、6日齢マウスの精巣器官培養系に添加したところ、いずれも精原細胞の増殖を促進させた。
 これらの結果から、NRG1はセルトリ細胞に発現し、erbB2とerbB4のヘテロダイマーを介して精原細胞の増殖を促進し、NRG3は生殖細胞、体細胞の両方に発現し、erbB4のホモダイマー、erbB1とerbB4のヘテロダイマー、erbB2とerbB4のヘテロダイマーのいずれか、あるいはすべてを介して、少なくとも精原細胞の増殖を促進することが考えられた。


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