研究発表を行った学会;日本発生生物学会第38回大会
2005年 6月 2日〜 6月 4日(仙台)
タイトル;イモリ精原細胞の減数分裂開始に対するstem cell factorとneuregulinの作用
発表者;内田 一郎 氏
(熊本大学大学院自然科学研究科 安部研究室)
Abstract;
精子形成過程における減数分裂開始機構は外的因子と内的因子によって制御されていると考えられているが、外的因子については未だ不明な点が多い。哺乳類において、stem cell factor(SCF)が精原細胞の増殖に必須であることは明らかになっているが、減数分裂開始における働きは明らかにされていない。我々は、ヒトSCFをイモリ精巣の器官培養系に添加すると、精原細胞の増殖が促進されるものの精母細胞への分化は誘導されないことを示した(Abe et al., 2002)。
今回、リコンビナントイモリSCF(rnSCF)を作製して器官培養系に添加したところ、ヒトSCFと同様に精原細胞の増殖は促進されるものの精母細胞への分化は誘起されなかった。しかし器官培養系ではシスト構造がほぼ完全に保たれているため、セルトリ細胞間のバリアーによってSCFが精原細胞に直接作用していない可能性がある。そこで次に、精巣をいったん乖離し凝集させた再構成培養系にrnSCFを添加したところ、精原細胞の増殖は促進されたが、やはり精母細胞への分化が誘起されなかった。
また、我々は、FSHの作用でmRNA発現が上昇する遺伝子の一つとしてneuregulin (NRG)をイモリ精巣からマイクロアレイ解析により単離した。イモリNRGの EGF-likeドメインのリコンビナントタンパク質を作製し、イモリ精巣の器官培養系、及び再構成培養系に添加したところ、精原細胞の増殖が促進された。
これらの結果より、SCFとNRGはいずれも精原細胞に直接働いて増殖を促進した。そこで、精原細胞に対するSCFやNRGの作用を直接明らかにするために、精原細胞のみを分離して長期培養が可能な再構成培養系を確立し、精原細胞の増殖促進と減数分裂開始への効果を解析しつつあるので、併せて報告する。
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