研究発表を行った学会;日本発生生物学会第38回大会
2005年 6月 2日〜 6月 4日(仙台)
タイトル;ニワトリ胚初期膵臓形成における細胞移動の解析
発表者;勝本 恵一 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 幹細胞制御分野)
Abstract;
本研究は、内胚葉形成メカニズムに焦点を絞り、内胚葉由来の臓器の中でも膵臓形成に着目した研究である。ニワトリ胚10体節期では将来膵臓に分化する細胞は、4-7体節領域下層に存在する(Matsushita,1996)。この時期では、将来膵臓になる内胚葉領域を単独で培養しても、腹側膵臓に分化しないが、隣接するlateralハmesodermと共に培養することで腹側膵臓に分化する(Kumarハetハalハ2003)。しかし内胚葉が形成される原腸陥入期から、10体節期までの間では、いつ、どこの場所に膵臓の前駆細胞が出現するのか、どのような経路を経て10体節期の予定膵臓領域に移動するのか、いつのstageまでに膵臓分化が決定されるのか、そのシグナルは何か等、ほとんど情報はない。そこで、原腸形成初期から原腸形成終了までに形成される内胚葉層を、DiI結晶をのせて数個の細胞をマークして、1.5日目胚(10体節期)まで追跡した。DiI結晶を用いることで今までのDiI液を用いた細胞追跡よりも少ない細胞数で追跡できる。Wholemountハ inハsitu ハhybridization法を用いて、10体節期予定膵臓領域である4-7体節領域に膵マーカー遺伝子 pdx1 が発現していることをまず確認した。stage3からstage4にかけて予定内胚葉細胞を数個マークしたところ、10体節期で予定膵臓領域に移動してくる領域を特定できたが、他の領域にも広範囲に広がることが分かった。従ってまだcellハfateが確定していないと考えた。そこでstage5での予定内胚葉細胞をマークしたところ、10体節期の4-7体節領域に移動してくる領域を、ヘンゼン結節周辺に特定することが出来た。また4-7体節領域に細胞がいったん移動してくると、10体節期までは比較的あまり移動しないことが経時的に観察することで分かった。
まだ初期的なデータであるが、細胞運命予定地図よりあきらかにした予定膵臓細胞を、8体節期の時期にドナーより取り出しDiI溶液でラベルして、ホストの8体節期予定小腸領域に異所的に移植した。20体節期まで培養して、cpdx1の発現をWholemount in situ hybridization法を用いてみたところ、移植した領域で発現が異所的に確認された。よって少なくとも8体節期の時期では、予定膵臓細胞はpdx1を自律的に発現できることが示唆された。
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