研究発表を行った学会;日本DDS学会
2005年 7月22日〜 7月23日(長崎ハウステンボス)
タイトル;シクロデキストリン/リポソーム複合担体を用いたドキソルビシンの抗腫瘍活性の増大
発表者;萩原 善之 氏
(熊本大学 薬学教育部 製剤設計学研究室)
Abstract;
【目的】我々はこれまでに、抗癌剤 Doxorubicin (DOX)/γ-シクロデキストリン (γ-CyD) 複合体封入 PEG リポソームが、担癌マウスにおいて、DOX 単独封入 PEG リポソームに比べ、血漿中からの DOX の消失を著しく遅延し、腫瘍中 DOX 滞留時間を有意に延長させることを報告した。 そこで本研究では、標的組織中における薬物滞留時間の延長による抗腫瘍効果の向上ならびに副作用の軽減を目的として、DOX/γ-CyD 複合体封入 PEG リポソームの担癌マウスに対する抗腫瘍効果および in vitro 細胞内挙動などについて検討し、さらに、複合体封入 PEG リポソームよりも抗腫瘍活性の増大が期待できる DOX/γ-CyD 結合体封入 PEG リポソームを調製するため、スペーサーの異なる 2 種類の DOX/γ-CyD 共有結合体の合成について検討した。
【方法】DOX 封入リポソームの調製:DOX 封入 PEG リポソームは、DSPC:Cholesterol:PEG-DSPE = 47:47:6 (モル比) 含有 CHCl3 溶液を減圧下留去後、pH 勾配法により調製し、Extruder を用いて粒子径を約100 nm に調整した。 リポソームサイズの測定:リポソームの粒子径は COULTER (株) 製 N4 Plus を用いて 25℃で測定した。 内封薬物量の測定:リポソームへの DOX 封入率は蛍光分光光度計を用いて測定し、γ-CyD 封入率はアンスロン硫酸法により測定した。 In vitro 実験:マウス結腸癌由来 Colon 26 細胞を用い、DOX の細胞内への取込みおよび細胞内からの放出を蛍光分光光度計により測定した。 In vivo 実験:Colon 26 細胞を Balb/c 雄性マウス (8 週齢,22〜25g) の左後肢に注入し、10 mm 程度の腫瘍を形成させたマウスを in vivo 実験に用いた。 DOX 体内動態:担癌マウスに各試料液を尾静脈より投与後、経時的に採血し、蛍光分光光度計を用いて血漿中 DOX 濃度を測定した。 臓器 (腫瘍も含む) 中 DOX 濃度は、頚椎脱臼後、各種臓器を摘出し臓器重量を測定後、HPLC を用いて定量した。 抗腫瘍効果の検討:担癌マウスに各試料液を尾静脈より投与後、腫瘍体積・体重変化・マウス生存率を測定した。 DOX/γ-CyD 結合体の調製:ジカルボニル化 γ-CyD を調製後、トリエチルアミンを触媒としてブロム化 DOX と2 hr 反応させ、DOX/γ-CyD 結合体を調製した。
【結果と考察】PEG リポソームへ γ-CyD を封入することにより、FCS 添加により起こるリポソームの初期放出バーストが抑制され、また、 PEG リポソームからの DOX の放出が有意に抑制された。
DOX/γ-CyD 複合体封入 PEG リポソームは、DOX 単独封入 PEG リポソームに比べて細胞からの DOX の放出を有意に抑制した。 担癌マウスにおいて、複合体封入 PEG リポソームは、単独封入 PEG リポソームに比べて血漿中からの DOX の消失を著しく遅延し、腫瘍中 DOX 滞留時間を有意に延長させた。 また、複合体封入 PEG リポソームは、単独封入 PEG リポソームに比べて担癌マウスの生存率を著しく改善した。
上記知見より、DOX の抗腫瘍活性の増大は、γ-CyD 封入によるリポソーム膜の安定化効果に加えて、DOX/γ-CyD 複合体形成に伴う DOX の細胞内滞留性の向上に起因するものと推察される。 今後、腫瘍中 DOX 滞留時間のさらなる延長ならびに抗腫瘍活性の増大を期待して、DOX/γ-CyD 結合体封入リポソームについても検討を行う予定である。
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