研究発表を行った学会;第28回日本分子生物学会年会
2005年12月 7日〜12月10日(福岡)
タイトル;ジンクフィンガー蛋白質Sall4の機能解析
発表者;榊(湯本) 真代 氏
(熊本大学 発生医学研究センター 細胞識別分野)
Abstract;
ジンクフィンガー蛋白質Sallはショウジョウバエからヒトまで広く保存された遺伝子ファミリーで、ほ乳類では少なくとも3種類(Sall1-3)が知られていた。我々は新規遺伝子としてSall4をデータベース上より見出し、cDNAのクローニング及び全ゲノム領域の単離、Sall4ノックアウトマウスの作製と解析を行った。
その結果、ヘテロマウスの大半は正常に生育・繁殖するが、一部に直腸や脳の奇形、発育遅延が確認された。ヒトSALL4はOkihiro症候群(上肢の形成異常や眼球運動の制限等を主症状とする疾患)の原因遺伝子であり、患者には直腸の形成異常も一部に認められる。つまり、ヘテロマウスの症状とOkihiro症候群の症状には共通点と相違点が存在し、Sall4の作用機構を考える上で非常に興味深い。既にOkihiro症候群モデルマウスを作製したので、この点については現在解析を進めている。またホモマウスは胎生致死であり、胎生5.5日目にはエピブラスト由来の組織に著しい形態的異常を来たしていた。さらに、胚盤胞(E3.5)のin vitro培養実験では内部細胞塊由来の細胞の増殖能低下が確認された。
そこで我々は、胚性幹(ES)細胞においてSall4を欠失させ、その影響を調べた。NeomycinおよびHygromycin耐性遺伝子を導入したターゲティングベクターを用いて欠失を試みたところ、Sall4欠失ES細胞は極めて低い頻度でしか得られず、得られた株は全て増殖能の低下を示した。この現象は、Sall4発現ベクターを導入することで解消され、Sall4依存的に引き起こされる現象であると考えられた。
上記結果より、Sall4はヒト疾患から予想される器官形成への関与以外に、初期発生およびES細胞の維持に重要な機能を担う分子であることが示された。また、4種のSallファミリー遺伝子ノックアウトマウスの交配実験からは、器官形成にはSall4単独のみならずSall1-3とのヘテロダイマーが器官特異的に機能している可能性も示された。
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