アクティブボード・2006年5月

     ・・・・・2006年 5月10日更新・・・・・

研究発表を行った学会;第28回日本分子生物学会
2005年12月 7日〜12月10日(福岡)
タイトル;クロマチンリモデリング因子による
    CTCF依存性インスレーター形成機構

発表者;石原 宏 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 器官制御分野講座)
Abstract;
 高等生物のゲノムは、核内配置や染色体全体に及ぶグローバルな制御を受けるとともに、各々の間期染色体は数10〜数100 kbのローカルな機能ドメインを形成している。ドメイン内の個々の遺伝子の転写調節に加えて、ドメイン内全体に影響を与えるエンハンサーやサイレンサー、LCRなどによる高次の遺伝子発現制御がなされている。エンハンサーは数10kb以上離れた遺伝子にも作用することができ、隣接する別のドメイン内の遺伝子にも働きうるが、実際には隣接するドメイン間の境界となるインスレーター配列が存在し、エンハンサーの作用はドメイン内に限定されている。また、ヘテロクロマチンに隣接するドメインはインスレーター配列によってヘテロクロマチンの侵入を遮断している。哺乳類ではCTCFと呼ばれる転写因子がインスレーター配列に結合し、インスレーター活性を担うことが知られている。しかし、CTCFがどのように染色体ドメインを形成しているのか、どのようなクロマチンを形成しているのか、換言すれば、哺乳類インスレーターの本質は何か、その詳細は不明である。そこで、我々はインスレーター活性におけるCTCFの役割を明らかにすることを目的に、CTCFの結合因子を探索した。その結果、新しいクロマチンリモデリング因子CTAP3が同定された。免疫染色、免疫沈降法によりCTAP3は細胞核内でCTCFと複合体を形成すること、クロマチン免疫沈降によりクロマチン上でCTAP3がCTCF結合部位に存在することが示された。さらに、RNAiによるCTAP3のノックダウンにより、CTCF依存性インスレーター活性が阻害された。また、CTAP3のノックダウンによりBRCA1とc-myc遺伝子座のCTCF結合部位近傍のDNAメチル化の増加が見られ、CTCF/CTAP3複合体はDNAの低メチル化の維持にも関与することが示唆された。これらの結果は、CTCF依存性インスレーターが高次クロマチン構造変換と密接に関連することを示唆する。CTCF依存性インスレーターの機能と分子機構について議論したい。


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