アクティブボード・2006年 6月

     ・・・・・2006年 6月 5日更新・・・・・

研究発表を行った学会;第28回日本分子生物学会
2005年12月 7日〜12月10日(福岡)
タイトル;線虫に存在する2種類のp97は異なる発現制御を受けている。
研究発表を行った論文;
  Seiji Yamauchi, Kunitoshi Yamanaka, Teru Ogura.
 Comparative analysis of expression of two p97 homologues in Caenorhabditis elegans.
 Biochem. Biophys. Res. Commun. (online May 5, 2006).

発表者;山内 清司 氏
   (熊本大学 発生医学研究センター 細胞複製分野)
Abstract;
 AAAファミリータンパク質は、全ての生物に普遍的に存在し、基質タンパク質の高次構造をエネルギー依存的に変換する分子シャペロンである。代表的なAAAタンパク質の一つであるp97(またはVCP、酵母ではCdc48p)は、タンパク質分解(小胞体関連分解など)、細胞周期の調節、膜融合、アポトーシスおよび転写調節など多くの細胞機能に関係している。またp97は、骨パジェット病や前側頭葉型痴呆を伴う封入体筋炎の原因因子として同定され、さらにポリグルタミン病との関連も示唆されるなど、ヒト疾患の病因・病態解明の点からも注目を集めている。
 ヒトやマウスは1種類しかp97を持っていないが、線虫はなぜか2種類のp97(CDC-48.1とCDC-48.2)を持っている。今回、我々は2種類のp97の発現パターンを詳細に解析し、各p97の発現量および発現部位の違いが、異なる表現型を示す要因の一つであることを明らかにした。おもな知見は以下の3つである。
(1) CDC-48.1のmRNAおよびタンパク質の量はCDC-48.2の約2倍であった。
(2) 緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質を用いた解析により、CDC-48.1は各生育段階において体全体で発現しており、特に貯精嚢で顕著な発現が認められた。一方、CDC-48.2は胚時期でのみ発現していた。
(3) 2種類のp97ともに小胞体ストレス下で発現誘導されたが、誘導条件は異なっていた。CDC-48.1の貯性嚢での顕著な発現に関連して、CDC-48.1を欠損した線虫では、生育速度が遅く、精子の数が少ないという表現型が見られることは興味深い。
 以上の結果は、2種類のp97が異なる発現制御を受けていることを意味しており、2種類のp97の機能分化に関連し、遺伝子発現制御の観点から今後の詳細な解析が待たれる。


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