『Biological Ontologyの現状と展望』
山崎 由紀子

国立遺伝学研究所 生物遺伝資源情報総合センター 助教授
   熊本大学 生命資源研究・支援センター 客員教授

 ここ10年の間にデータベースは質・量ともに飛躍的に成長し、生物研究者にとってデータベースは今や道具の1つとして不可欠のものになった。その中にたとえ定率のエラーが含まれていることがわかっていても、利用者は増える一方である。なぜならば、検索の対象となる情報量が、ハードコピーで探し当てることができる限界量をはるかに超えてしまったからである。
 しかしコンピュータのメモリ容量や演算能力の日進月歩に比べると、人間の記憶や認識の許容量が爆発的に増大することは望めそうにない。このままでは検索対象どころか、検索結果さえ人間が把握できる量を簡単に超えてしまうことになる。
 一方で、人間は無意識のうちに実に多様な知識圧縮方法を駆使して日常生活をしていることがわかる。「〜のようなもの」というグルーピングの発想もその1つである。分野を限定してこの「〜のようなもの」である「概念」をグルーピング(すなわち構造化)する、これがBiological Ontologyの考え方である。インフラは情報科学の専門家が担当し、コンテンツは生物の専門家が担当するという二人三脚で進められている。
 現在は欧米諸国に完全にリードされているこのBiological Ontologyの現状と展望について紹介したい。


熊本大学 生命資源研究・支援センター 遺伝子実験施設,
E-mail: www@gtc.gtca.kumamoto-u.ac.jp