熊本大学・遺伝子実験施設
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2000年10月30日 更新
「ヒトゲノムの全解読と比較ゲノム解析」
ヒトゲノム計画は、今ドラフトシーケンスの段階を
東京大学医科学研究所
教授 榊 佳之
終え、本年6月にヒトゲノムの真性クロマチン領域の
85%以上をカバーする配列データを得たと発表した。
我々はこのヒトゲノムドラフト配列解析プロジェクト
に参画し、高速のシーケンス解析システムを構築して
11番及び18番染色体を担当した。先ず、その解析の
状況を報告する。
このヒトドラフト配列データは、BACクローン単位
ごとにいくつもの断片的配列のままでDDBJ/
GenBank/EMBLのデータベースに登録されており、
ヒトゲノムの全体像を見るのは容易ではない。我々は
ドラフトシーケンスされた約23, 000BACをそのシー
ケンスの重複をもとにマップし、シーケンスデータを
編集したデータベースHGREPを作成した。このHGREP
をもとにした、ヒトゲノムの全体像の解析についても
次に報告する。
ヒトゲノムの全配列の解読は、間もなくである。しか
し現在までに99.99%以上の精度で染色体丸ごとで解析
を完了したのは、21番と22番染色体の2つのみである。
我々は、このうち21番染色体の全解読で中心的役割を
果たした。本講演では、225遺伝子の同定や遺伝子砂漠
領域の発見など、この21番染色体解析の詳細について
報告する。
しかし、このような高精度のデータを手にしても、
ヒトゲノム配列のみの解析から引き出せる情報には限界
がある。そこで、我々は機能的に重要な配列は進化的に
保存されることに注目し、マウスゲノムとの比較解析を
進めている。この解析を通して、新しい遺伝子の発見や
転写制御エレメントの同定などに成功している。この比
較ゲノム解析の有用性について考察する。