優秀作品(3)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2006年 5月17日更新


『イエスの遺伝子』(教育学部)

(1)この本を選んだ理由を書いて下さい。
 前に出したレポートに対しての先生のコメントに紹介されていた本だったから。

(2)この本で著者が一番伝えたい事は何だと思いますか?
 1.”受けるよりは与える方が幸いである。”
 2.”…だれもがみなを治療出来て、だれもが自然な病気で死ぬことがない世界を。どのような行動をとっても重大な結果になることのない世界を。世界の人口は膨大になり、地上に天国が生まれるどころか、この世の地獄が出現することになる。土地はない。食べ物もない。生命に対して、あるいは死に対して敬意が払われることもない。

(3)この本を読んで感じた事、考えた事を書いて下さい。
 もちろん神はいない。迷える魂の群れにとって確実に分かっていることはただひとつ
“苦しみばかりの長い人生だ”
 著書自体はとても長かったが、ストーリーがおもしろく読み進めていくうちにどんどん引き込まれていった。それは、この小説が今の科学技術では、この先ありえないことでもなく、現実に起こりうることであるからだと思った。まず、印象深く残った場面について、一つずつ率直にに感じたことを述べていこうと思う。最初の段階で、娘ホリーに脳腫瘍があるかも知れないことに対してトムが「私を経由して」と言っている場面で、人は誰でも異常遺伝子をもっている話を思い出した。劣勢なので表に出る可能性は低いのだが、例えば、結婚しようとしている相手と自分とではそれが子供に対して影響を及すとわかれば、果たして人々はどのような選択をするのであろうか。そう考えるとその事実を知りうることは人々の幸せに値するのかは疑問である。次に個人ゲノム情報保管庫IGORについての話が出た。情報についての問題は授業でも問題となったが、お金や取引や、その分野に関するプロなどを考えると、安全は保証されないと思った。また、癌についても学ぶことが出来た。”癌というのは細胞が不死性を獲得しようとした結果なのだ。この利己的な不死性の探求が、肉体のほかの部分を殺してしまう。”末期癌について学ぶ機会があったが、治る見込みのない人々にとって一番欲しいものは普段の生活であるらしい。ジャックの一言「ホリーにとっていちばん良いことをしているかどうかということだ。」がこれを協調していると思う。幸せばかりが続いてもそれに麻痺して幸せだと感じることが出来ないかも知れないし、辛いことの中のたった一つのことがとても幸福に思えるのかもしれない。いったい何がその人の為に一番良いことであるかとは判断出来ないと思った。その答えは、人間にとっての永遠の課題である。後半読むにつれ、ますます、何が正義で悪であるかがわからなくなってきた。トムが困惑する場面で、娘を救おうとして、自分勝手に、わき目もふらず、他人がどう考えようと知ったことかと探索を続けてきたことに原因がある。とあったが、トムを主体として読むと、娘の命を助けるために必死になる父親だとみてとれるが、この物語のようなDNAが解明され、現実に完全治癒というものが実現されたとしても、人々が幸せになることはないと思った。私は、人間の遺伝子が解読され、不死の病というものがなくなったら、人々は幸せな一生を送れると思っていたが、人口増加、寿命延命(この本では600歳とされていたが)、などのあらゆる問題がさらに出てきそうだ。私としては尊重しがたい見解なのだが、戦争が起こるのも世の中の人口増加をくい止める一つの手段となっていることも聞いたことがある。考えがうまくまとまらなかったが、科学が進歩すればするほどまた新たな倫理面などの問題も発生しそうである。


*****2005年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2005
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