つい先日、新聞の見出しに"狂牛病"の文字を見ていた。一年ほど前にはうんざりするほどニュースやワイドショーで"狂牛病"という言葉を聞いていた。それなのにこの本を読み終わった今になってやっとその病気について知り、またその怖さ、そして政府などに対する怒りを感じるようになった。
しかし、私がここで書きたいのはそのことではなく、未知のものを解明していく困難さと情報化社会の中で生きるということである。前者はまさにこの本に書かれているとおりだ。ニューギニア、フォアで発見された"クールー"というヒトの脳障害に始まる一連の奇病に関して、それに感染症スポンジ状脳症という名前がつくまでにかかった時間、人、お金そして罪もない実験動物たちの命のことを考えると、私たちが簡単に当たり前のようにして知ることができた病気やその内容がとても貴重なものに思えてくる。
また後者について、私はこんなにも情報に満ちあふれた社会に生きていながら、それを半分も有効に利用していないとつくづく感じる。狂牛病についても、知ろうと思えばいくらでもそうすることはできたのに、この本を課題として出されるまであいまいにしたままほおっておいた。その危険性もよく考えないままに。本を読めばイギリス政府などに対して怒りの感情を抱くが、よく知ろうともせず政府にまかせっきりにする私のような人間にも狂牛病がひろがった責任があることを認めざるをえない。
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