優秀作品(5)

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健

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2004年 4月17日更新


『イブの七人の娘達』(法学部)

 自分が読み終えてまず思ったことは、人間はすごい生き物であるということだ。何万年も前の遺伝子を今、自分が保有しているということは驚くべきことであるし、ミトコンドリアDNAだけ他のDNAと違い、母方からしか遺伝しないという性質を持っているということも、人類の神秘を感じる。もし人間のDNA全てが、両親から受け継がれるのであれば、何万年も前の先祖のことは分からなかったのだが、ミトコンドリアDNAが母系遺伝であることや組換えが行われないこと、変異が起こりにくいという遺伝学にぴったりの性質を持っているというのは、少し不思議な感じすらする。まるで、後世の人類が大昔をたどれるように、初期の人類が用意したようだ。
 また、現代ヨーロッパ人の先祖を七つの一族にわけて挙げていたが、その七人の娘の具体的な生活風景を読んでそれが架空の理想図ではなく、実際の映像のような感じで頭の中に入ってきた。七人すべてに共通していたことは、子供を大切にしていたことであり、そのことが今の人間社会の繁栄につながっているのではないかと思う。最近ひんぱんに起こっている児童虐待は、これと全く逆のものであり、そういう風潮が高まれば、人類そのものの将来すら危うくなるのではないかと感じた。
 現代の技術の進歩は素晴らしいものであるが、人間の体の奥深くに眠る神秘を全て解き明かすには至っていない。昨年ヒトゲノムの解読に成功したというニュースを耳にしたが、これからも人間の秘密を解き明かす研究を進めてもらいたいと思う。過去の人間は、必ず現代の人間に学ぶべきものを与えてくれると自分は確信している。また、さまざまな分野でも、遺伝子が果たす役割は大きいということが講義でわかった。自分はこの本を読んで、ミトコンドリアDNAのことや、胎児の男女決定は男性の精子に決定権があることなど多くの知識を学ぶことができた。しかし、それ以上に自分が一番この本を読んでよかったと思うことは、研究者の熱意やひらめき、大昔の人々の生き様などを学べたことだ。


*****2003年度・優秀作品*****
冬休みの課題レポート・2003
教育活動
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