2004年度 レポート第4回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2004年12月 1日作成

2004年度 最前線の生命科学C レポ−ト第4回(2004年11月10日実施)回答集

[ テーマ ]『人は誰でも20個以上の遺伝病の保因者だという事実について』

[ 回答 ](全12人)

・人は誰でも遺伝病を保因しています。そして同じ病気の保因者同士の子供の4分の1は発病する可能性があります。しかしながらDNAの塩基配列を調べることによって対策が採れるようになっていくでしょう。まだ対策のない病気でも自分の保因している病気を知っていれば新しい試みなどに対して参加することや新情報を知ろうと心がけることができます。これはとても素晴らしいことだと思います。
 一方で自分の保因している遺伝病を知らなければよかったと思う人もいるかもしれません。でも少しきつい言い方をすればそれは逃亡にすぎません。知らないなら対策も練れないし、一番つらい思いするのは問題を先延ばしにした本人だと思います。知っていれば能動的に問題に対して取り組むことができます。だから自分の保因している遺伝病を知るべきだと思います。
 人は誰でも20個以上の遺伝病の保因者だという事実は事実として受け止めてそれを知った人々は真摯にその問題に取り組んでいくべきです。それこそが今まで数多くの病気と闘い、いまだに闘い続けている人間の基本的な姿勢だと思います。(医学部)

・メンデルのえんどう豆の実験は中学の時に見て以来久しぶりに見ましたが、あの時勉強したことが遺伝子の解析においての発端となっていたということには驚きました。メンデルの実験においては優性遺伝と劣性遺伝が3:1の割合で表れるということしか頭に入っておらず、言われてみればそうだけれど、これも遺伝子に関連しているのだなあと実感させられました。後、人は潜在的に20種類以上の遺伝病を持ちうるのには大変驚かされ、やはりまだまだ遺伝子について無知であるなあと思いました。(医学部)

・今回の講義で、人は誰でも20個以上の遺伝病保因者だということを習って、僕はそれくらいの数は妥当ではないだろうかと思ってしまった。
 と、いうのも、遺伝性疾患の実態がよく見えなかったためである。ここで上げられている、「人の発病しうる五千の遺伝性疾患」が、すべて生命にかかわるようなものならば、それは由々しき事態であると僕も思う。だが、例えば、人の鎌状赤血球症などの遺伝性疾患を考えれば、それは必ずしも生きていくのに不利とならない。
 この例で言うならば、赤血球が鎌状に変形するため、マラリアなどの流行病に対して感染が起こりにくい。そのため、逆にこの遺伝性疾患がある個体のほうが生きていくのに有利になり、生存競争で勝ち残る。そして現実にその遺伝子を伝える人ばかりが生き残ったため、疾患が遺伝され、患者が大量に偏在する地域があると、僕は聞いたことがある。
 確かにこの場合、悪性の貧血などの諸症状もあるのだろうが、重要な点は、遺伝性疾患でももたらされる利点がありうるということだ。ならば、一口に遺伝性疾患とまとめてしまっても、中には我々に及びもつかない、環境が変われば恩恵を得ることの出来るような、そんな疾患もあるのではないか。遺伝的な多様性を考えれば、いつ有利な条件に変わると知れない疾患が、その五千のうちには含まれている気がしてならない。そう考えると、20個以上の遺伝的保有は、そうおかしなことではないような気が僕にはした。(医学部)

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   『遺伝的な多様性が重要である』というのは、いろんな問題を考える場合のキーワードのひとつだと思います。(コメント by 荒木)

・いたって健康な自分が、統計上20個もの変異遺伝子の保因者であることを初めて知り、とても意外でした。(医学部)

・メンデルの分離の法則を中学生の時勉強してた覚えがありますが、人は誰でも潜在的に障害を持ってるというところを見て、びっくりしました。たとえ今の私は健康だとしても、年をとったら、あるいは私の子供が、遺伝病にかかる可能性もあるとは言えるのではないかと思っていたからです。中国では結婚する前に必ず病院に行って診察してもらってから、結婚届出すようになっています。それも遺伝病を防ぐための一環かも知れません。(文学部)

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   中国では結婚前に健康診断が必要ということですが、もしも病気が発見されたらどうなるのですか? (質問 by 荒木)

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・ご返信ありがとうございました。確かに中国では、結婚する前に健康診断が必要ですが、もし問題が発見されたら、自分の子供を産む代わりに、もらい子をしたりするらしいです。どうせ結婚しても、子供を作らない夫婦(共働きのほうが多い)も多いですから、そんなに問題にはなっていないと思います。しかし、結婚ができなくなった例もあるそうです。ちょっと残酷ですね! (質問に対する回答 文学部)

・もし、10000人に1人の割合で起こる遺伝病があるとしたら、それは逆算すると、50人に1人がその病気の因子を持っているということになる。10000人に1人と聞くと、大きな数字で、身近ではない気がするが、50人に1人となれば、自分にも関わってくる数字にとらえられると感じた。50人に1人というと学校のクラス二つに1人はいる…というような数字だ。将来、個人の遺伝子がデータベース化されて、病院で自分がどのような病気の保因者であるか知ることができるようになったとしたら、一体どれだけの因子を持っているのだろう…と思った。(理学部)

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   確かに50人に1人という例えの方が説得力があるかも知れませんね。(コメント by 荒木)

・人は誰しも20程の遺伝病の保因者である…よく理解している人間なら問題はないが、何も知らない人間がこれを聞いたらどう思うだろうか?まず間違いなく不安に駆られるだろう。自分の、そして子供の遺伝病の危険はどうなのだろうか、と。もし不十分な情報が世間に流れれば、それこそ混乱する人間も出てくるだろう。そうならないためにも、個人情報などの取り扱いは十二分に慎重にならねばならない。(医学部)

・TVなどでもたまに遺伝性疾患については目にしたことはありましたが、その時は自分には「関係のないことだな」などと思いながらなんとなく見ていました。しかし、今回の講義で自分も約20個もの遺伝性疾患を持って生まれてきていたなんてかなり驚きと不安を感じました。遺伝子診断については、個人管理に使われる時代も間近に迫っていて自分がどのような遺伝性疾患を持っているのか、などという様々なことがわかるようになるそうですが、話を聞いたり資料を読んだりしていると決していいことばかりではなく、はたしてそれは本当に私たちのためになるのか、このままゲノム科学は進み続けていいのかなどとも思ってしまいました。(工学部)

・人はだれでも20個以上の遺伝病の保因者ということですが、病気が発病するかどうかはまったくの偶然なので私がたとえ遺伝病だといわれても、それは仕方がないことだと考えるかもしれません。
 それよりもいつも思うのは、遺伝病という言い方では、なにも知識がない方が聞けば、まるで病気をおこす遺伝子が存在しているかのような錯覚をしてしまうのではないかということです。遺伝子はあくまで設計図であって遺伝子自体がなにかをするということはないと思うのですが。(医学部)

・この計算が微妙な式によって20個以上という数値が導き出されているのであまり賛成できない。しかも遺伝病というと恐ろしいイメージがあり、なんか悪いことがありそうと思ってしまうが、遺伝病にもぴんからきりがあるので案外20個以上っていう数字は当てはまるのかもしれない。問題はその遺伝病がどれだけ深刻かということだろう。願わくばたいしたことがありませんように、それは運任せなのだろう。(理学部)

・どんなに革新的でも発表当時に論文が認められないことが多々あるようだ。
 だが過ぎて斬新なものが人々に受け入れられ辛いのは当然のことなのだろう。当時の時代背景のせいもあったのだろうが現在もそういった問題は全く無いわけではない。
 それは常識という名の偏見であり、我々が中々認知しづらいものであるためどうしようもない。天才や真に偉大な学者が不遇であるのは仕方のないことなのかもしれない。(医学部)

・講義中にも聞かれた事であるが、私は20個以上の遺伝病の保因者である事にさほど驚きは感じられなかった。それは私が生物を専攻しているからであろうか。地球上の歴史から考えると人間の歴史は微々たるものであるが、遺伝子はかなり傷付いているだろう。この問題で重要なことは「保因者」ということではないだろうか。持ってはいるものの発症しない。これは人が有性生殖を行っている恩恵のようなものではないか。有性生殖を行うことで遺伝子の多様性に拍車がかかり、発症の可能性を抑えているのだと考える。誰でも20個もの遺伝病疾患の保因者だ!と不安に考えるよりも、発症させずに保因者で留まらせているということに注目すべきではないだろうか。(理学部)


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