2004年度 レポート第7回 回答集

熊本大学
生命資源研究・支援センター
バイオ情報分野
荒木 正健
Tel : (096) 373-6501, FAX : (096)373-6502
2006年 5月19日更新

2004年度 最前線の生命科学C レポ−ト第7回(2004年12月 1日実施)回答集

[ テーマ ]『あなたの住んでる町が久山町と同じ試みを始めたら参加しますか? その理由も書いて下さい。』

[ 回答 ](全11人)

・僕は個人的には賛成です。なぜなら、自分の疾患を未然に防ぐ事ができ、そのことによってまた医療費も削減することができるからです。しかし、僕は全員が受ける義務はないと思います。例えばアドバイスで、もしあなたは約三年後に死にますと言われるのと、三年弱経って急に、もって一月ですって言われるのはどっちが自分にとって幸せなんでしょうか?
 僕は死を受け入れ、残りの三年を有意義に生きようと思うので前者を選びますが、全員にこうしろと押し付けようとは決して思いません。人それぞれ死に対する考え方は異なると思うので、一概にこっちが正しいというわけではないと思います。だから、疾患リスクアドバイスシステムは全員が強制で受けさせられるのではなく、個人個人で聞きたくない(ショックを受ける)部分は、知らせないようにすればいいと思います。(医学部)

・久山町の試み、つまり疾患リスクアドバイスシステムとは、まぁ要するに遺伝子をも含めた健康診断をしますよ、ということです。情報の漏洩、またそれに伴う差別意識や知りたくないという意見など課題は多いと思います。しかしながら、このシステムに賛成しようと思います。というのは、もし自分のかかりやすい病気とか分かっていたら、対策が練れるからです。例えば、胃がんになりやすいなら、半年に1度は病院で検査してもらいます。そして医師に自分の体質のこと(ここでは胃がんになりやすい。)を話したら、特に胃を詳しく調べてくれることでしょう。それは早期発見につながるし、早期治療により存命率も高くなります。ほかにもまだ治療の見込みのない不治の病でも自分の病気を知っていたら、最新の治療の情報を得てどうにかしようとか、情報網を張って治療法を待つとか、いろいろな可能性が見えてくるはずです。
 かなり嫌な言い方になるかもしれませんが、病気の可能性や遺伝子病の保因を知りたくないという疾患リスクアドバイスシステムに対する反対意見の方というのは病気が見つかるのが嫌で健康診断に行きたがらないお年寄りの方とたいしてかわりません。ただ病気が見つかるのが怖いからって、駄々をこねているのです。やはり知らないで病気が末期になったり、急死してしまったりするより普段から心構えをしてしっかりとして予防してた方が自分にとっても周りの人たちにとってもいいんじゃないかなと思います。
 だから、自分は疾患リスクアドバイスシステムに賛成します。情報の漏洩はやはりあります。それはカルテの漏洩と体質的にかわりません。とても怖いことです。でも、そこはセキュリティーをしっかりしてこの素晴らしいシステムを運営していけるようにすべきです。(医学部)
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 立派なレポートだと思います。ポジティブ思考の方が、精神的にも健康を保つのに良いでしょう。運営する側だけでなく、利用する側にもテクニックがいるということかも知れません。   (コメント by 荒木)

・参加します。今回の講義で新しい医療の形を知ることができました。高気圧酸素治療もそうでしたが、医学部に入って多様な医療システムに多く触れました。熊本にもしそういった医療が導入されたなら受け入れられると思います。現代人にとって特に無視できない問題なので、どの場所でも必ず理解されるはずです。(医学部)

・今回の授業で行ったディベートで賛成点と反対点を言い合いましたが、プライバシーの問題などもありますが、利点の方が多いと思うので実際に同じ試みを始めたら私は参加すると思います。確かに高い確率で病気になることがわかったならばショックだとは思いますが、それに対しての予防策を実践することでわずかばかりでも気休めになるかもしれませんし、仮に病気になったとしてもそれが原因で死ぬとも限りませんから、ゆっくり治していけばいいという考え方を持つことすればショックも軽減できるのではないかと思います。(医学部)

・今回の講義の話は面白かった。討論の中で、最初自分は賛成だったのが、だんだん反対よりになっていったことが自分の中でも面白かった。反対意見の中で一番なるほどなぁ、と思わされたのは、保険関連の問題が出たときだ。まったく考えが及ばなかった。人を信じられないのは悲しいことだが、そういったことでの情報の漏洩は、かなりの確立で起こってしまうと思う。金融の業界では、顧客の生年月日と名前が分かれば、当人のこれまでの借金の履歴が分かってしまうようなデータベースが、一昔前から出来ていたらしい。このデータベースを使って、これまで借り入れ金額が多い客などはお引取り願い、借り入れ経歴のある新入社員は採用不可とするわけだ。他の金融機関との軋轢を避けるためにできあがったシステムだろうが、これは個人情報の漏洩だ。遺伝的な情報も、同じようなことが起こってしまうように思われる…。
 遺伝的な疾患や、その疾患遺伝子の保有で、差別的なことが起こってしまうとはあまり想像できないでいたのだが、知らないということは恐ろしいな、と思った。いつか疾患遺伝子の保有は遺伝的多様性に含まれるのではないか、といったようなことをレポートで書いた覚えがあるが、少し恥ずかしい。僕の中では遺伝病といったら、ブラックジャックにでてくる「短指症」とか、「色盲」。高校の生物で習った鎌状赤血球症などの印象がとても強かったから。今回の講義で少しだけ話に出てきていた…、もうその病名は忘れてしまったが、そのような疾患があるとは知らなかった。疾患のある当の本人にとっては、知らなかったでは済まされない問題だろうが。申し訳もない。
 あなたの住んでいる町が久山町と同じ試みを始めたら、参加しますか?という問いには、僕はYESと答える。でも少し条件付のYESで、情報提供というボランティアの形であったなら、僕は参加をする。
 このシステム上、サンプルの情報量は多いほうがいいだろうし、その情報で助かる人がいるのなら、僕は悪い気はしない。でもだからといって、自分の遺伝情報をわざわざもらいに行くほど、僕の人生はヒマじゃないような気がする…。…遺伝疾患があっても、死ぬまでは生きていかねばならないし、生きていくには、働かねば食っていけないし…。先の心配をわざわざ背負い込むことを望むよりは、僕は知らないでいることを選択するだろう。それに、そのほうがずっと健康にはよさそうだ。
 今のところ僕はまだ身軽だから、自分の遺伝情報が漏れても困ることは少ない。困るのは、就職活動のときくらいだろうか。ただおそらく、押し付けがましく遺伝情報を教えてくれるシステムならば、僕はNOと答えるだろう。(医学部)
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 情報提供というボランティアの形なら参加するというのは、おもしろい意見ですね。「疾患リスクアドバイスシステム」とは少し性格が違うような気もしますが。しかしながら、住民全員が積極的に健康診断を受け、死んだら剖検を認めるという久山町の取り組みが、もともと崇高なボランティア精神から始まったのは確かだと思います。つまりバイオデータベースの作製には積極的に参加するということですね。(コメント by 荒木)

・私は賛成です。なぜなら、こういうシステムがあれば、いやでも健康にたいする意識があがると思うからです。病気は発見が早ければ早いほどなおる確率があがります。このようなシステムを利用して自分の体調を管理して、少しでも異変が生じたらすぐに気付けるようになれば、病院にいった頃にはもう手遅れだったということも減るのではないでしょうか?(医学部)

・もし私が住んでいる町が久山町とおなじ試みを始めたら私は参加すると思います。なぜかというと、研究の進みにできるだけ、協力してあげたいと思ってるからです。
 授業中にも討論しましたけれども、反対意見も出てきましたが、よく考えてみると、確かに弊害もあります。利益が弊害より多かったら、いいのではないかと思っています。
 「治すことができない病気の宣告」はもちろん残酷ですが、治すことができないと決まっているなら、仕方がないです。患者に対しては、むしろ早めに知らせて命を延ばすため、治療方法を探させるほうがもっともいいと思います。「プレッシャー、ストレスになる」のは患者自分の問題ですから、この試みのせいではないです。
 だから、私は賛成意見を持っています。(文学部)

・私は「参加」します。
 理由は、健康管理が効率よくなるだの医療費の削減につながるだの色々ありますが、一番の理由は自分の好奇心です。自分がどんな遺伝子をもっているかなど自分で把握したいと思うからです。私は様々なアレルギーや家族性の高コレステロールなどを持っているので、おそらく色々な病気の原因遺伝子が見つかることでしょう。健康状態うんぬんよりも、どんな遺伝子が原因で、それがどんなタンパクをコードしていて、生体内でどんな働きを担っているのか…、そこに自分の興味が湧いてくるので、参加したいと考えます。(理学部)

・講義を受けていたときは、生活習慣病などをこういう形で回避できるのならいいことではないかと思いましたが、いざ自分が受けてみるかということを考えてみたらかなり悩みました。
 今後の自分の生活習慣をどのようにするかによって生活習慣病にかかってしまう確率が具体的に数字で分かるということはいいとは思いますが、もし自分が現代の医療技術では治せないような病気にかかるかもしれないと分かってしまうと正直かなりショックを受けると思います。だから僕は今の自分の生活をどのように改善すれば生活習慣病のような病気を回避できるかが分かるだけなら受けてみてもいいと思いました。(工学部)

・最初の私の意見ならば参加はさせません、理由として前回のべた反対理由があるからです。しかし、皆さんの意見の中でボランティアの形なら参加するという意見がありましたが、たしかにこちらが望まない限り情報を提供しないのならそういう行いとして参加するのもいいかもしれないと思いました。(理学部)

・参加したいと思います。というのも、いずれにせよこのような医療のあり方が将来導入されるとしたら、どんな人も戸惑うことでしょう。それを早期に体験しておくことによって慣れることもできるし、また今の健康状態を数値的に把握できるのはメリットだと思うからです。普段生活していて、この病気が危ないかなー、とか考える人はまずいないと思います。それを事前に、それもどの程度早急な対処が分かるのは利点ではないでしょうか? (医学部)

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・疾患リスクアドバイスメントシステムは、医師が主体となって用いられるという話になっていましたが、これは市民が個人的に利用する場合では、マージンが取れなくなるから、ということと、情報の漏洩の恐れがあるから、ということが大きな原因なのですか? (質問 by医学部)
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 少なくとも久山町の住民は無償で利用できるはずですので、「マージンが取れなくなるから」ではありません。参考資料1ページ目の最後の方に書いてありますが、医師や保健師などの医療従事者がシステムを操作し、医療従事者としての知見を活かしつつ、被験者に分かり易い言葉でアドバイスすることを前提にしています。つまり、脳梗塞になる確立が50%という結果だけを素人が知ればパニックになるだけですが、医療従事者から適切なアドバイス付きで情報を入手すれば、今後どんな生活をすれば良いかという前向きな考え方が出来る、ということでしょう。セキュリティーの問題も、もちろん大きいと思います。不特定多数のコンピューターがアクセス出来るようなシステムでは絶対にハッカーの餌食になりますので、サーバーにアクセス出来るクライアントマシンは物理的にもソフト的にも制限する必要があると思います。 (コメント by 荒木)

・HPでレポートとかまだみれないのですか??(後期2004年分) (質問 by理学部)
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 リクエストありがとうございます。遅くなりましたが、「2004年度 最前線の生命科学Cレポート」のページを作成しました。チェックして下さい。(コメント by 荒木)


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